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夢の汽車に乗って プレゼント  ~クリスマスストーリー 後編(3-3)~

プロフィール

yumenokisya

Author:yumenokisya
現住所 北海道十勝国

 好きな言葉は
『なんとかなるべさ』

 そう、生きてさえいれば
何とかなるもんです。。。
   


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「もしもし?」

「あっ、高代君? 柴田です」

「あ、あぁ。プレゼントは買えた?」

「ダメ・・・
 駅前のおもちゃ屋さんに行ったんだけど売り切れだった。
 ・・・どうしよう。
 ねぇ? 他に何処かおもちゃ屋さんって知らない?」

「おもちゃ屋さんねぇー あっ、そうだ! あるよ!
 ねぇ、今何処?」

「駅前、おもちゃ屋さんの前」

「そっか。じゃあ、そこを右に行って・・・」

確か、駅前から三条通りに出て二丁か三丁行った所に
小さなおもちゃ屋さんがあったはずだ。
でも、随分前のことだし今もあるかどうか確信はなかった。

「そうだ! じゃ、デパートの前で待ってて。すぐに行くから」

「ごめんね、ありがとう・・・」


ケーキが崩れないように胸の前に抱えるとデパートに急いだ。
デパートの前では柴田みゆきが待っていた。

「待たせてごめん、急ごう!」

「うん」


楽しそうに語らいながら街を歩くカップル。
忙しそうに帰りを急ぐサラリーマン。
イヴの夜はいつも以上に華やかで賑やかだった。
でも、こんな風に走っているのはきっと俺達だけだったろう。

信号を無視して道路を横断するにはイヴの夜は適さない。
それほど走っている車は途切れることはなかった。

信号が変わる度、まるでダッシュでもするかのように走っては
また、信号で止まる。

もどかしい思いで信号が変わるのを待つ。
そしてまた、無言で走り出す。
少し積もった雪に転びそうになりながら
それでも転ばずに走れたのは特別な夜の奇跡と言っても良いのかもしれない。

走りながら俺はいつか観た映画を思い出した。

「ふふ」

思わず笑った俺に気が付いた柴田みゆきは
走りながらも怪訝な顔で俺を見た。

「どうしたの?」

「いや、昔観た映画を思い出してね」

「映画? どんな?」

息を切れせながら俺は答えた。

「『ジングル・オール・ザ・ウェイ』だったかな。
 クリスマスの夜にやっぱり子供の為におもちゃ屋さんに行くんだけど
 目当てのモノが何処も売り切れでさ。
 で、何件もハシゴをするんだけど・・・さて、どうなるでしょう?
 みたいな、そんな感じ(笑)
 あっ、笑い事じゃなかったね。こんな時にゴメン」

俺はどうも何かにつけてタイミングが悪いみたいだ。
柴田みゆきがこんなに困っているのに余計なことを言って
かえって心配を助長してしまっただろう。

「ごめん・・・」

柴田みゆきは急に立ち止まると
俺を見て息を切れせながら訊いた。

「それでどうなったの?
 映画だからもちろんハッピーエンドよね?」

並んで走っていた俺も慌てて立ち止まると柴田みゆきを見た。
そして答えた。

「もちろん」

「じゃ、大丈夫だわ! きっと見つかる!」

「そうだね。さぁ、急ごう!」

「うん!」

俺達はまた走り出した。


息を切らせながらその店の前に着いた時
店主らしき人物がちょうど店のシャッターを下すところだった。

「あっ、すいません! ちょっと待ってください!」

叫ぶ俺にその人物はシャッターを下ろす手を止めて振り向いた。



店を出るといつの間にか雪は止んでいた。

「良かった」

柴田みゆきはやっと買えたプレゼントを大事そうに抱えながら呟いた。

「最後の一個だったもんね。ラッキーだったね」

「ありがとう、高代君のおかげだわ」

「いや、柴田の気持ちが通じたんだよ」

「でも・・・」

「でも?」

柴田みゆきは買ったプレゼントを両手で抱えたまま呟いた。

「うん・・・正直に言うとね。
 美咲・・あっ、娘ね。
 美咲の欲しかったのってコレなのか自信ないんだ。
 遠慮してなのか? それともそういう歳なのか?
 『プレゼントは何が欲しいの?』って言っても
 『サンタさんに頼んであるから秘密』って言って
 私には教えてくれなかったの」

「うん」

「テレビのコマーシャルやマンガの本の広告とか
 美咲が真剣に観ていたから多分、そうかなって思ってるんだけど」

「うん」

「でも、違ったらどうしよう?
 さっきまでは<コレ>って決めて探していたのに
 いざ見つかって買えたとなると何だか不安になったりしてね。
 あはっ、変だよね?
 娘の欲しいモノも知らないなんてダメな母親だわ」

柴田みゆきはそう呟くとフッと溜め息をついた。
俺は歩いている足を止めると柴田みゆきを見て言った。

「大丈夫じゃない? 確か五歳だったよね?
 ん・・難しいっていうか微妙な年頃ではあるかも知れないけど
 母親が買ってくれたプレゼントだもの。
 それが嬉しくないはずがないよ」

「ふふ、相変わらず優しいね。
 ねぇ、覚えてる? 中学三年の時の文化祭」

「えっ? なんだっけ?」

「あの時も高代君は私達のために走り回ってくれた」

「そうだっけ?」

頭を掻きながら俺は答えた。
もちろん覚えてはいたんだけど今となっては気恥ずかしい想い出だった。

「教室の飾り付けをしていた時
 飾りに使うピンクのテープが足りなくなって
 他の男子達は『有る色で続けよう』って言ったけど
 女子は『それじゃ変だ』って言い合いになったじゃない?」

「そんなことあったっけ?」

「そしたら高代君が『俺が探してくる』って。
 あの時もあっちこっち探して買いに行ってくれたのよね?
 でも、高代君が戻って来る前に
 中の女子が他のクラスに訊いてくれて見つけたんだけど
 その後で、せっかく買って戻って来た高代君は
 一言も文句も言わずに続きを手伝ってくれた」

「・・・」

「あの時は腹が立たなかった?」

「さぁ・・・どうだったかなぁ・・・忘れたよ」

「高代君らしい言い方・・・相変わらず優しいんだね。
 それに比べて私は変わっちゃったなぁー」

「そんなことはないよ」

「ううん。変わったわ。
 離婚もそうだけど、色々なものを見ちゃったし
 良いこともあったけど、そうじゃないことも。
 美咲がいなかったら今頃、私はきっと私じゃなくなってたかも」

柴田みゆきは寂しげにそう言うと
又、ゆっくりと歩き出した。

「そっか・・・」

他に気の利いた言葉も見つけられずに
そう言うと俺も又、並んで歩き出した。

無言で歩く二人。
しばしの沈黙が長い時間に思えた。

「でも」

俺はケーキを片手に持ったまま
おもむろに両手を挙げ少し伸びをしながら数歩歩き
そして立ち止まって柴田みゆきを見ると
やっと見つけた言葉を並べた。

「それを<変わった>っていうなら俺もだよ。
 俺だって色んなものを見たと言うか・・・見せられたって言うかさ。
 考え方だっていつまでも学生のままじゃやっていられないしね。
 良くも悪くも変わってるんだと思う。
 でもさ。それも含めて<成長>って言うんじゃないのかな?」

「うふふ。やっぱり高代君は変わってない。
 ううん、もっと優しくなってるのかなぁー?
 きっと良い恋愛もたくさんしたのね」

「それはどうだか。未だに独身やってるしさぁー
 その辺は一番自信が無いとこかな(笑)」

頭を掻きながら俺は答えた。

確かに、過去には恋愛もいくつかしたし
結婚をしたいと思った女性がいたこともあった。
でも、何でだろう?
その時はそれほど真剣にはなれなかった。

一度タイミングを逃すと人間って逃し癖がつくのか?
それともそれが俺の持って生まれた性質なのか?
結婚をしたい時に相手はいなくて
そうでもない時は相手が出来ても積極的になれずに今日まできていた。

やはり俺は根っからタイミングの悪い男なんだろうか?
俺は俯くと少し自嘲気味に笑った。

「どうしたの?」

「えっ? あっいや・・・」

俺は我に返って又、頭を掻いた。

「変なの(笑)」

柴田みゆきはさっきまでの不安気な様子も忘れたように屈託なく笑った。

『やっぱり、柴田は笑顔の方が似合ってるな』

改めて柴田みゆきの顔をまじまじと見つめるとそう心の中で思った。

「何?」

柴田みゆきはきょとんとした顔で訊き返した。

「ん? いや、別にね」

「何よー? 絶対、何か思ってたでしょ?」

柴田みゆきが問い詰めるように訊いた。

「あはは、別に何でもないよ」

「そう? でも、怪しい・・・」

「怪しくないよ。気のせい、気のせい(笑)」

そこで柴田みゆきは神妙な顔に戻ると改めて俺に礼を言った。

「ごめんね。せっかくのイヴなのに変なことに付きあわせちゃって」

「いや、どうせ帰ってもヒマだったしさ。
 あっ、そうだ! これ」

俺は持っていたケーキを差し出した。

「何?」

「ケーキ。しかも、駅前の『モン・サン・ミッシェル』」

「すごーい! 有名店よね? 知ってるわ。
 でも、いつもデパートで売れ残りばかり買っているから縁が無い店だわ」

「どう?」

「えっ? どうって?」

柴田みゆきは少し困惑をした表情をした。

「これ、もらってやってくれないかな?
 せっかくクリスマスケーキとして生まれてきたのに
 <こいつ>可哀想な奴なんだ」

「えっ? 可哀想って? ケーキが? どうして?(笑)」

「実はさ・・・」

俺はこのケーキをもらうことになって顛末を話した。

「でさ、注文主には捨てられて、やっと次の主に貰われたと思ったら
 そいつは独り者でどう考えても美味しいうちに食べきれそうもない奴で。
 このままだとこいつは明日の夜には
 汚いアパートの一室でカサカサになっている・・・かも知れない?(笑)」

「あはは、何それ?(笑)」

「だからさ。<こいつ>の幸せのために柴田にもらって欲しいんだ」

「えっ? でも・・・
 お礼をしなきゃならないのは私の方なのに悪いわ」

「いや、だからさ。
 俺の為にじゃなくってさ。<こいつ>の為にね。
 <こいつ>だってケーキをして生まれたからには
 可愛い子供や素敵な女性に食べて欲しがってると思うよ。
 少なくとも俺なんかよりはね(笑)」

「でも・・・」

「さぁ、遠慮せずに!
 これも人助け・・・いや、ケーキ助けだと思ってさ(笑)」


柴田みゆきは少し考えてから想定外の言葉を言った。

「じゃ、一緒にケーキ助けしましょ」

「えっ?」

今度は俺が困惑をする番だった。
もちろん、嬉しくないという意味ではなかった。
その言葉の意味を測りかねてという意味でだ。

そんな俺の表情を感じ取ってか柴田みゆきは
多分わざと?
大袈裟に顔の前で手を合わせて俺に謝る仕草をした。

「ごめんね。又、高代君に迷惑をかけるところだった。
 私ってすぐ調子に乗っちゃうタイプなんだわ。
 ホント、ごめんね。気にしないで」

「いや、全くの全然だよ!」

俺は慌てて否定をした。
しかも混乱をしていたのか?
はたまた単に動転していたのか?(何に?)
<頭が頭痛>みたいな変な日本語になっていたのにも気が付かなかった。
もしかしたら声も上ずっていたかも知れない。

柴田みゆきは<クスッ>っと笑った。

「えっ? 何か変だった?」

「ううん。多分、大丈夫よ。
 高代君って嘘がつけないタイプね」

柴田みゆきはそういうと又<クスッ>と笑った。
そしてしみじみと言った。

「なんか懐かしいね」

「あぁ、そうだね。
 同窓会の時はあまりゆっくり喋れなかったけど
 今は卒業してから十五年ぶりだなんて気がしないなぁー」

「うん、私もそう思ってた」

「十五年か。長いね」

「うん・・・」

「あの頃、俺は自分が三十歳になるなんて想像できなかった。
 でもきっと、四十歳になっても五十歳になっても
 同じことを思うんだろうな。
 気持ちは全然変わってないのに不思議だよな」

「そうね。私も五十歳になっている自分なんて想像も出来ないな。
 どうなっているんだろう?」

「柴田ならきっと幸せになっているさ」

「その根拠を述べよ」

柴田みゆきは俺の方に人差し指を突きつけると笑いながら言った。

「えー? そう言われても・・・」

「こらこら。根拠も無しに言ったの?」

「まぁ、しいて言えば・・・柴田・・・だから?」

「何それ? 答えになってない」

「希望的観測ってやつ?」

「なんかテキトー!」

柴田みゆきはふくれっ面になって文句を言った後で大笑いをした。
つられて俺も笑った。

「あー、おかしい!
 こんなに笑ったの久し振りだわ」

「それはよござんした」

俺はおどけて答えた。

「じゃ、場も和んだということで
 はい、これケーキさんの為に持って帰って」

「でも・・・」

「いいから、いいから」

俺は柴田みゆきの手にケーキを持たせた。

「美咲ちゃんが喜んでくれると良いけど」

柴田みゆきはプレゼントの袋を手首にかけたまま
両手でケーキを抱えると視線を俺に向けた。

「美咲がどのくらい喜ぶか確かめに来る?
 ううん、来て欲しいの・・・」

「えっ?
 でも、突然俺なんかが行ったら美咲ちゃんもとまどうんじゃない?」

「かもしれない・・・でも、何とかなるよ」

「そうかなぁー」

「希望的観測」

「あー! それ、俺のマネだ!(笑)」


結局、俺は図々しくも柴田みゆきをアパートに同行をすることになった。


柴田みゆきのアパートは十五分ほど歩いた先の閑静な住宅街にあった。
一棟に四件が入るそんなに大きくはないアパートだったが
築年数は十年という割にはキレイな今風のちょっと洒落たアパートだった。

「ここよ。小さいアパートでしょ?」

「いや、俺のアパートよりは遥かにキレイだよ」

「じゃ、夜なのでちょっとだけ静かに上がりましょ。二階なの」

俺は無言で敬礼をして見せた。
柴田みゆきは又、<クスッ>と笑った。


建物の真ん中にある階段を上がると
柴田みゆきは右の玄関を黙って指差した。

そしてショルダーバッグから鍵を取り出して玄関のドアをそっと開けた。

<カチャッ>

静かに開けたつもりだったが
その気配に気づいたのか小さな女の子が居間のドアを開けて駆け寄って来た。

「ママー!」

と、叫んだかと思うと
その瞬間、柴田みゆきの後ろにいた俺に気がついて
美咲ちゃんは固まったように立ち尽くしていた。

「あっ、美咲。この人はね・・・」

柴田みゆきが慌てて説明をしようとした時
美咲ちゃんは満面の笑顔になるとこう叫んだ。

「わぁー! クリスマスプレゼントね?
 私、サンタさんにお願いをしていたの。
 『新しいお父さんが欲しい』って!
 ママー、ねぇ、そうでしょ?」


果たして俺なんかが美咲ちゃんにとって
特別な夜に願った通りのプレゼントになったのか?
それはまだ今は解らない。

でも、少なくとも俺にとっては
この瞬間が
特別な夜の特別なプレゼントになったのは間違いない。

今までは何かにつけタイミングが悪かった俺だけど
こんなこともある。

なんせ今夜は特別な夜だからね。




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コメント

ほのぼのとしたお話ですね。

幼い子供の心情を包み込む
優しい眼差しを感じます。

贈り物を届ける優しいサンタさんの
ほろ苦ほろ甘加減、絶妙ですね。

Merry Christmas

すみれさん、こんばんは。

ありがとうございます(^-^)

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