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夢の汽車に乗って サンタクロース見習いの恋 (その4完結)

プロフィール

yumenokisya

Author:yumenokisya
現住所 北海道十勝国

 好きな言葉は
『なんとかなるべさ』

 そう、生きてさえいれば
何とかなるもんです。。。
   


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「三田。お前、今夜は何か予定があるのか?」

昼の休憩から戻ると倉久に呼び止められた。

「今夜・・・ですか? えーっと、ちょっと待ってください」

三田はおもむろに手帳を開いた。

「そうですねぇ・・・えー、
 今夜は駅前商工会の美人OLと某お嬢様大学生との合コンが二件入ってますね」

「何? ほ、本当か?」

「えぇ。何と言ってもクリスマスイヴですからね。
 今夜は盛大になるだろうなぁ~」

三田はわざと大仰に言いながら倉久を見るとニヤリと笑った。

「良し、解った。お前は今夜は残業だ!
 合コンは任せておけ。
 俺が忙しいスケジュールをやり繰りして何とかするから!」

倉久が真顔で返す。

「先輩、ダメですよ。
 男の参加資格は二十代なんですから」

「何、大丈夫だ。見えるだろ?
 俺だって気持ちは十分に二十代だし」

「嘘ですよ」

「何だよ、俺だってだなぁ~  ・・・えっ?」

「う・そ・で・す!
 予定なんか何も無いですよ。
 先輩、一緒に残業でもします?
 付き合いますよ」

三田は苦笑しながら倉久に言った。

「何だ、嘘かよ。
 嫌だよ、イヴに男二人で残業なんてするくらいなら
 ここから飛び降りた方がマシだぜ」

「あはは。じゃ、先輩がお亡くなりになったらケーキでもお供えしときますよ」

「うるさいよ!」

二人は顔を見合わせながら大笑いをした。
そこに三田の携帯電話が鳴った。

「あっ、明日花先生だ!」

「おっ、明日花先生からデートのお誘いかい?」

それには答えずに三田は慌てて受話ボタンを押した。

「あっ、先生。先日はありがとうございました。
 編集部でも大評判でした・・・えっ?
 あっ、はい。・・・はい。
 えぇ、大丈夫だと思います。
 はい・・・はい・・・はい、解りました。
 無理をしないで下さい。こっちは何とかしますから。
 ・・・はい、・・・はい、お大事に」

「どうした?」

「あっ、いや・・・実は明日花先生が昨日から熱で寝込んでいるそうなんですよ。
 それで明日の締め切りを延ばしてくれないかって」

「それで?」

「いや、二~三日なら大丈夫ですから」

「バーカ! そうじゃないだろ?
 先生の具合だよ!
 とっとと先生の所に行って確認して来い!
 それが編集者の勤めだろうが!」

「あっ、は、はい」

「あっ、途中で薬も買って持って行けよ」

「あの・・・ケーキは?」

「お前、バカか? 当然だろ?
 必ず買って行けよ。イヴなんだからな」

倉久はそう言うと笑って三田の背中をポンと叩いた。



三田は明日花の仕事場のマンションに着くとインターフォンを鳴らした。
だが、返答は無かった。

「おかしいなぁ~」

もう一度インターフォンを鳴らそうとした時、チェーンロックの掛かったドアが少し開いた。

「三田さん! どうしたの?」

パジャマにガウンを羽織った姿の明日花が驚いた顔でドアを開けると三田を玄関先に招き入れた。
明日花の額には熱冷まし用の大きな冷却シートがしっかり貼られていて前髪は逆立っていた。
それに気が付いたのか
明日花は慌てて額の冷却シートを剥がすと後ろ手にそれを隠して前髪を指で何度も直した。

「ごめんなさい、変な顔をしっかり見られちゃったね。
 でも、どうしたの?」

「いや、そんな事無いです。
 あの、寝込んでいると聞いたものですから、ちょっと。
 先生、大丈夫ですか?」

「えぇ、まぁ。熱はまだあるけど少し寝ていれば大丈夫だと思うわ。
 とりあえず、入って。ここは寒いわ」

「はい。じゃ、少しだけ失礼します」

三田は明日花の後をついて居間に入った。

「散らかっててごめんなさい。
 その辺に座ってて。
 今、コーヒーでも入れるわ」

「いえ、そんな! 大丈夫です。構わないで寝ていて下さい」

明日花はじっと三田を見た。
その視線に気が付いた三田は顔を赤らめると頭を掻いた。

「そうですよね。恋人でもない男が部屋にいたら安心して寝てられないですよね。
 すいません、すぐに失礼します」

「ふふ」

「あっ、先生。これ・・・解熱剤です。
 それから総合感冒薬、漢方の咳止め薬でしょ。
 喉飴に・・・そうそう、栄養ドリンクも買って来ました!」

「あらあら。私って相当な重病人みたいね」

明日花はクスっと笑った。

「あれ? おかしかったですか?」

「ううん。嬉しいわ」

「あっ、そうだ! ケーキも買って来ました。
 イヴですから・・・あっでも、今は・・・食べられませんよね?
 置いておきますから後で食べて下さい」

「やっぱりコーヒーを入れるわね。
 一緒に食べましょ」

「いや、そんな」

「なぁに? イヴの夜に重病人に独りでケーキを食べろって言う気?」

「い、いや・・・」

「きっと私、余計に寂しくなって死にたくなるわ。孤独死かぁ・・・」

明日花は胸の前で指を組むと、三田をチラッと見てから大袈裟に十字を切った。

「もう、先生!」

「あはは、冗談よ、冗談」

明日花はそう言うと悪戯っぽくウインクをしてみせた。

「もう、からかわないで下さいよぉ~」

「そうだ、せっかくだからせめてムードだけでもクリスマスっぽくしましょ」

そう言うと明日花は台所に行き、戻った手には赤いローソクの立てられた燭台を持っていた。

「どう? らしいでしょ?」


明日花はテーブルを挟んで三田と向かい合わせに座った。
テーブルの上には二つのコーヒーカップと二つのショートケーキ。
そして、テーブルの真ん中には燭台。
明日花はろうそくに火を点けるとリモコンで部屋の明かりを消した。

ろうそくの火が部屋の真ん中を柔らかく浮かび上がらせていた。

時々、ろうそくの火が微かに揺れていたのは
それは二人の息遣いそのものだったろう。

三田はドキドキしながら、ろうそくの火を見つめていた。
いや、その火の向こう側にいる明日花を見つめていた。


「わー、ロマンチック~
 うふふ。何だかドキドキするね。
 額の大きな冷却シートと爆発頭を見られた後じゃ興醒めでしょうけど?」

「い、いや。そんな事は無いです!」

三田はムキになって否定をした。
明日花は少し微笑むと顔の前で手を合わせた。

「さっ、食べよ。いただきま・・・」

言いかけた途中で明日花はテーブルにそのまま突っ伏した。

「先生!」

慌てて三田は明日花の元に駆け寄ると明日花の額に手を当てた。
すごい熱だった。

「先生! 大丈夫ですか?
 しっかりして下さい! 先生!
 あっ、そうだ救急車を呼ばなきゃ!」

三田が携帯を取り出すと明日花は震える手でそれを止めた。

「先生、ダメですよ!
 今、救急車を呼びますから!」

「だい・・じょうぶ・・・」

苦しそうな表情をしながらも明日花はようやくの体で答えた。

「大丈夫じゃないですよぉ」

三田は明日花をそっと抱きかかえるとベッドに優しく寝かせた。
明日花はうなされてでもいるかのように苦しそうに大きな荒い息をしていた。

「やっぱり、救急車を・・・」

三田が言いかけると明日花は半分起き上がりながら三田の首に手を回した。

「ルカ・・・」

「えっ?」

「ルカ・・・やっと、逢えたね・・・」

「先生?」

荒い息をしながらも明日花は必死に三田にしがみついていた。

「先生!」

思わず三田も明日花をかばうように抱き締めた。


「ルカ・・・」

「ルカ・・・? 誰だ・・・? 何処かで聞いた・・・事が・・・」


その瞬間、三田は全てを思い出した。



あのクリスマスの夜。
ルカがサンタクロースとして最初で最後に贈ったプレゼント。
それは、ルカだった自分が自分の命と引き換えに明日花に与えた”生命”だった。

ルカの身体を構成していた無数の子供達の魂がひとつになって明日花の身体に宿り
明日花の魂と同化した時、身体にみなぎった”新しい魂”は
明日花の身体中を駆け巡り病気と言う病気を残らず消滅させていった。
そして、イヴが明けたクリスマスの朝に明日花が目覚めると身体は健康体に戻っていたのだ。

後日、明日花を診察した医者は驚きを隠さずに言った。

「奇跡です!」


その時、ルカの身体に最後に残ったひとつの魂。
それはルカ自身だった。
ルカも又、生まれて来れなかった子供の一人だったのだ。

だが、たったひとつの魂だけではルカの身体は支えられるはずもなく
ルカの身体も又、同時に消滅をしたのだが
その魂は天に導かれるように空へと還って行ったのだ。


神様は還って来たルカの魂を慈しみをもって慰めると、
しばらくの休息の後でその魂に再び新しい”生命”を与えた。
しかし、どの時代のどの場所に生まれるかはルカには知る由も無かったのだが
生まれ変わる前に神様はルカに言った。

「生まれ変わる先は強い縁に拠って導かれるであろう」と。



翌朝、明日花が目覚めると三田は明日花の右手を両手で握ったまま
明日花のベッドにもたれ掛るようになって眠っていた。

「えっ? どうして、三田さんが?
 あっ、そうか・・・」

明日花は昨夜の事を思い出した。

「それじゃ、三田さんはずっと私の看病を?」

明日花は胸の奥が温かくなるのを感じた。
しかし、それは熱のせいではなかった。
熱はすっかり引いていたのだ。


「それにしても又、あの夢・・・
 三田さんが現れてから良く見るようになったけど、本当に関係ないのかなぁ。
 三田さん。ねぇ、どうなの?」

明日花は眠っている三田を見ながら呟いた。
それから三田を起こさないようにそっと手を解くとベッドから起き上がり
三田の背中に自分の毛布を優しくかけた。


明日花が台所でコーヒーを入れていると寝室でドタドタ走り回っている三田の声がした。

「先生! 何処ですか? 先生?」

「こっちよ」

そう言いながら明日花が居間に戻ると
慌てた形相の三田が寝起きのはねた髪で息を切らせて立ちすくんでいた。

「どうしたの? あらぁ、髪の毛が爆発してるわよ。
 どうやら寝癖は私と良い勝負ね。これでアイコだわ」

明日花は楽しそうに笑った。

「先生~ もう、何処かに行っちゃったかと思いましたよ」

へなへなと三田はその場に座り込んだ。

「行かないわ。だから、あなたももう何処にも行かないで」

「えっ?」

「うふふ。何でもない。さっ、コーヒーが入ったわ。冷めないうちにどうぞ」


明日花は思っていた。
三田がルカなのかどうかは、もうどうでも良い。
でも、これから大事な人になっていくであろう予感。
それは大切にしていきたいと。




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