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夢の汽車に乗って サンタクロース見習いの恋 (その2)

プロフィール

yumenokisya

Author:yumenokisya
現住所 北海道十勝国

 好きな言葉は
『なんとかなるべさ』

 そう、生きてさえいれば
何とかなるもんです。。。
   


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「次はあそこですね?」

ソリが下降を始めるなりルカは一軒の家を指差して言った。

「そうじゃ。だんだん解ってきたようじゃの?」

「はい!」


その家は良くある建売のごく普通の一軒家だった。
濃紺の三角屋根に明るい水色のサイディングの壁とルーバー窓が印象的だった。
そして、小さいが良く手入れの行き届いた庭。

その庭先には犬小屋があって茶色の小型犬が眠っていたが
二人に気が付いたように、ふと立ち上がると上空を見た。

犬と目が合ったサンタクロースは
指を口の前に立てると<シー>と黙ってのサインをした。

サンタクロースを知っているのかは解らなかったが
犬は又、何事も無かったかのように身体を伏した。

「良し良し、良い子じゃ」

サンタクロースがソリを降りて犬の頭を撫でると犬は気持ち良さそうに目を閉じた。
犬もサンタクロースの夢を見るのだろうか?


「そうじゃ、ルカ。
 ここはお前が一人で行っておいで」

「えっ? 僕が・・・ですか?」

「そうじゃ。そして、お前が上げたいと思う”プレゼント”をしてくるのじゃ」

「で、でも・・・」

「何、大丈夫じゃて。お前もサンタクロースなんじゃからのぅ」

「サンタクロース? 僕が?」

「あぁ、そうじゃ。子供達から見たらの」

「は、はい。解りました!」

「ここの子供は、あの二階の部屋じゃ」

そう言うとサンタクロースは二階の花柄のカーテンが掛かった部屋を指差した。
多分、女の子なのだろう。

「それじゃ、行って来ます」


二階の子供部屋に入ったルカは人の気配に思わず立ちすくんだ。

「誰?」

歳は十三~四歳くらいだろうか。
少女はベッドから起き上がると真っ直ぐルカの方に歩いて来た。


稀にサンタクロースを”見よう”と起きている子供がいるが
サンタクロースが部屋に入った瞬間に魔法に掛かったように子供は眠ってしまうものなのだ。
だから、どんなに頑張って起きていても
結局、子供達にはサンタクロースは見る事が出来ない・・・はずだった。

ルカは驚いて身動きが出来ずにいた。
こんな事態を誰が予測出来ただろうか?


「そこにいるのは誰? 男の人? ううん、パパじゃないわ」

「あっ、あの・・・怪しい者じゃないから」

ルカは咄嗟にそう言うのが精一杯だった。
少女は怪訝そうに訊いた。

「あなた、誰なの?」

「ぼ、僕は・・・」

「ねぇ、もしかしてサンタさん? ねぇ、そうでしょ?
 でも、声が若いわ・・・」

「あっ、あぁ・・・そう。そうなんだ! でもまだ見習いなんだけどね」

「見習いのサンタさん? うふふ、おかしな人ね」

「あの・・・怖くないの?」

「どうして? あなた、サンタさんなんでしょ?」

「そう・・・だけど」


その時、ルカは初めて気が付いた。
少女にはルカが”見えて”いないのだ。


「君・・・僕が見えていないのかい?」

「えぇ。でも、そこにいるのは解るわ」


『どうしたら良いんだろう?
 まさか、こんな事になるなんて!』

ルカは考えあぐねていた。
こんな事態はおそらくはサンタクロースでさえ想像していなかっただろう。

どうして良いのか解らずルカはすぐにでも逃げ出したい気持ちだった。
だが、サンタクロースとしての責任もある。

ルカは思い切って少女に尋ねた。

「ねぇ、ところで君。プレゼントは何が良い?」

「いらない」

「どうして? 欲しいものは無いの? 着せ替え人形とかぬいぐるみとか」

「もうたくさんあるわ。パパもおばあちゃんもたくさん買ってくれるの。
 だからもう、これ以上プレゼントをもらっても”みんな”とは遊べないわ。
 それに私、きっと春まで生きてられないの」

それは突然の言葉だった。

「えっ? ど、どうして? まさか・・・病気なの? 何の病気なの?
 病院は? 入院をしてなくて大丈夫なのかい?」

突然の言葉に考えもまとまらないままにルカは少女に尋ねた。

「もう手遅れなんだって。
 この前、パパとママがお医者様と話しているのを聴いちゃったの」

少女は寂しそうに俯いてベッドに腰を下ろした。。

「そんな!」

ルカは言葉を失った。

『何て言う事なんだろう?
 初めてプレゼンを渡すはずの子が病で余命幾ばくも無いなんて』

ルカは呆然と立ち尽くしていた。

『こんな時、サンタクロースならどうするんだろう?』

ルカはチラッと後ろを振り返ると
家の外にいるであろうサンタクロースにすがるように心の中で助けを求めた。

だが、もちろんサンタクロースには届くはずも無かった。


「ねぇ、どうしたの?」

少女の声でルカは我に返った。

「あっ、あぁ・・・何でも無いよ」

「そうだ!
 プレゼントはいらない代わりに何かお話をして。
 サンタさんの町ってどんな所?
 普段は何をしているの?
 今夜はどんな町でどんなプレゼントをして来たの?
 どうして、あなたはおじいさんじゃないの?
 サンタさんって本当はみんなそうなの?
 もしかして何人もいるのかしら?」

矢継ぎ早に質問を繰り出した少女の瞳はキラキラ輝いていた。
何も見えていないなんて信じられないくらいに。


「あっ、ごめんなさい!
 こんなにいっぺんに質問をしたって答えられないよね?
 私って意外とせっかちなのね。
 今、気が付いたわ」

少女はそう言うと舌をペロッと出して笑った。

「私、<明日花> 明日に花って書いて<あすか>って読むの。
 ねぇ、あなたのお名前は?」

少女の笑顔にドギマギしながらルカは答えた。

「僕は<ルカ>」

「ルカ? まぁ、素敵なお名前ね。どんな意味があるのかしら?」

「さぁ・・・ただ、そう呼ばれていたから」

「お父様が付けたのかしら? ねぇ、サンタクロースってお父様?」

「いや、そう言うのじゃないと思う。
 僕には家族がいないんだ。
 サンタクロースにも家族はいない。
 そう言うモノなんだ」

「そう・・・何か可哀想・・・」

「でも、寂しいと思った事は無いんだ。
 いつも<誰か>といるような気がするんだ。
 もちろん、サンタクロースはいつも一緒だったけど、何て言うかな。
 そう言うのとも違う<誰か>がいつも僕と一緒にいるんだ」

「ふぅ~ん。何か良く解らないね。不思議な話だわ」

「明日・・花ちゃん、隣に座って良いかい?」

ルカは明日花に訊くと返事を待たずに明日花に並んでベッドに腰を下ろした。

「で・・・住んでいる所だっけ?」


明日花の笑顔を見ているうちにルカは少し落ち着きを取り戻した。

『少し話をしていたら、この子に本当に必要な”プレゼント”が見つかるかも知れない』


「住んでいる所はね、ずっと北の国なんだ」

そう言いながら、ルカは気が付いた。
何も知らないのだ。
住んでいる家は解る。
家の前に拡がる牧場に何十頭ものトナカイが自由に草を食べている。
でも、町はと言うと解らなかった。
近所にどんな人が住んでいるのか?
いや、そもそも他に住んでいる人なんているのだろうか?


「ねぇ?」

「あっ、ごめん」

「どうかしたの? 訊いちゃいけなかった?」

「い、いや・・・そう言うんじゃないんだ。
 ただ・・・解らないんだ」

「解らない? どうして?」

「さぁ・・・どうしてだろう?
 気が付いたら僕はサンタクロースの家で手伝いをしていたんだ。
 でも、それがいつからなのか?
 サンタクロースにとって僕は何なのか?
 それが解らないんだ」

「ねぇ? じゃ、あなたのパパやママってどんな人?」

「うん・・・それも解らないんだ。
 今はニコラウスと言うサンタクロースの手伝いをしているんだけど。
 でも、君の言うパパではない・・・それは確かだと思う。
 さっきまで考えた事も無かったけど、でも本当に解らないんだ・・・」

「でも、サンタさんらしい話ね」

明日花はニッコリと微笑むと言った。

「サンタらしい? そうなのかな・・・」

「そうよ! これで、普段は役所勤めでイブの夜だけサンタさんに変身するとか
 実はサンタさんってオモチャ工場で働くロボットだとか
 そんなんじゃ夢が無くなるわ」

「あはは。明日花ちゃん、君は想像力が素晴らしいね!」

ルカは明日花と話をしていると愉快な気分になった。

「でも、少なくともあなたはロボットじゃなさそうね?」

「多分・・・ね。でも、人間とも違うと思う。それだけは解るんだ」

「どんな風に?」

「ん~ 何て言ったら良いのか・・・先ず、お腹が空かないんだ」

「えー? じゃ、何を食べているの?」

「何も」

「何も?」

「うん、何も。トナカイに草は食べさせるけどね。
 でも、僕やサンタクロースは何も食べないんだ」

「平気なの?」

「でも、何も食べないけど・・・でも、さっき気が付いたんだ。
 子供達に<プレゼント>を配って回っていると不思議と満たされていくんだ。
 ねぇ? 僕はロボットなのかな?」

「良くは知らないけど、こんな優しいロボットはいないと思うわ。
 でも、サンタさんって神様の親戚なのかも。だからお腹が空かないのよ」

「まさか! 神様は神様だよ。僕はそんな偉い人じゃないもの」

「ねぇ? ルカは病気とかはしないの?
 風邪を引いたりとか、頭が痛くなったりとか、熱が出て働くのが辛くなるとか?」

「いや、それは無いよ。そんな記憶も無いんだ」

「羨ましい・・・」

そう言うと明日花はルカの手を握った。

「温かい・・・あなた、本当に良い人なのね」

明日花が手を握るとルカも心が温かくなったような気がした。


ふと、ルカがベッドの横の机に目をやると一冊のスケッチブックが目に入った。

「明日花ちゃんは絵を描くのが好きなの? あのスケッチブック・・・」

「外で遊べないから」

明日花は少し寂しそうに答えた。

「そっか・・・ねぇ? ちょっと見せてもらっても良い?」

「ダメよ。恥ずかしいもの」

「ねぇ、ちょっとだけ」

「内緒にしてくれる?」

「内緒に? もちろんだよ」

「じゃ、ちょっとだけよ」

照れたように頬を赤らめると明日花は机のスケッチブックを手に取るとルカにそっと手渡した。


スケッチブックには窓から見える景色だろうか?
雪に覆われた白い大地と葉を落とした幾つもの樹木が。
そして、遥か向こうには同じく雪を被った白い山並み。
その上の空はとてもキレイな水色に塗られていた。

ページをめくると今度は色々な動物達が描かれていた。

「あっ、これはウサギだね? これは猫。それから・・・これは馬だ」

「うふふ。良かった。タヌキだとか怪獣なんて言われなくって」

「まさか! とても上手だよ!」

「私ね。絵本作家になるのが夢だったの」

「だったって、そんな。まだこれからじゃ・・・」

そう言いかけてルカは言葉に詰まった。
確か明日花は目が見えていなかったはずだ。
でも、こんなに上手に絵が描かれている。
それはつまり以前はちゃんと目が見えていたと言う事だ。
それに、明日花の話が本当なら明日花にはそれほど時間が無いのだ。
今はどんな言葉をかけたとしても、それは気休めにもならないだろう。

ルカは胸が詰まった。
こんなに苦しい想いは生まれて初めてだった。

「あー、せめて目が見えたらなぁ~
 そうしたら、外に出られなくたって絵は描けるのに」

明日花はそう言うと大きな溜め息をひとつ、ついた。

「そうだ、ちょっと待って!」

ルカは<プレゼント>の入った大きな袋の中を探し始めた。

『新しい目は無いんだろうか? どんな病気も治る薬は?』


「どうしたの?」

「いや・・・ちょっとね。そうだ! ちょっと待っていてくれる? すぐに戻るから」


ルカが外に出ると家の上にサンタクロースを乗せたソリが浮かんでいた。


「あの・・・」

ソリの助手席に乗り込んでルカがサンタクロースに話しかけると、
その言葉を遮ってサンタクロースは答えた。

「全部、ここで見ておったよ」

「はい。あの子に上げたい<プレゼント>があるのですが袋の中にそれが見当たらないんです。
 何とか、何とか、ならないんでしょうか?」

「うむ。袋の中には世界中の子供達へのプレゼントが入っておる。
 じゃが、どうしようも無い事もあるのじゃ」

「そんな!
 だって、サンタクロースは子供達に
 夢だって希望だって勇気だって上げてきたじゃないですか。
 病気を治す薬くらい無いんですか!」

ルカは夢中でサンタクロースにくってかかった。

「これ、ルカ! 落ち着きなさい!」

「あっ、す、すいません・・・」

我に返ったルカは膝の上で拳を握りしめて項垂れた。
その震える拳には大粒の涙が滴り落ちていた。

「お前の気持ちは良く解る。
 じゃがのう、人間には運命と言うものがあるのじゃ。
 サンタクロースはプレゼントは渡す事は出来ても運命まで変える事は出来ないのじゃ。
 例えば、さっきは男の子に勇気を贈ったじゃろ?
 だが、その勇気をどう活かすのか?
 それとも、何の役にも立たずに失くしてしまうのか?
 それはその子次第なのじゃ。
 それ以上の事はワシ達には出来ないのじゃ」

「じゃ・・・僕はあの子に何を上げたら良いんでしょう?
 希望ですか? 春までには死んでしまうあの子に?
 勇気ですか? 死を恐れない勇気ですか?
 夢を上げたところで、それは却って残酷過ぎます・・・
 僕には・・・僕には、もう解りません・・・」

すがるようにサンタクロースに向かってルカは訴えた。

「僕はどうすれば良いのですか?」

「昔・・・もう、ずっと昔の事じゃ」

遠くを見つめながらサンタクロースは独り言のように呟いた。

「ワシもずっと以前に先人から聴いた話なのじゃが。
 その昔、自分の命と引き換えに子供の命を救ったサンタクロースがいたらしいのじゃ。
 じゃが、それは掟を破る事になる。
 サンタクロースは神では無いのだから本来、人間の運命を変えてはならぬのじゃ」

「そのサンタクロースは・・・どうなったんですか?」

「さぁな。解らぬのじゃ。
 消滅してしまったのか?
 何処かで魂だけが彷徨っておるのか?
 誰にも解らぬのじゃ」

「でも、助ける事は出来たのですね?」

「子供はな。そう聴いておる」

「では、その方法が解ればあの子を助ける事が出来るのですね!」

「じゃが、それは昔の話じゃ。
 果たして本当の事なのか?
 ただの伝説なのか?
 ワシにも解らぬのじゃ。
 ただ・・・」

「ただ?」

「強い気持ちで結びつく事が出来れば、もしかしたら・・・
 実はの、ワシらの身体は生まれて来れなかった子供達の魂が集まって出来ておるのじゃ」

「生まれて来れなかった?
 子供達の魂・・・そうか!」

ルカがいつも一緒にいると思っていた<誰か>が解った気がした。

「そうなんだ。
 だから僕は寂しくは無かったんだ!」

「その魂があの子の魂と真の意味で結びつく手立てがあれば
 もしかしたら助けられるかも知れん。
 じゃが、それはルカ、お前の死をも意味するのじゃぞ」

「解りました!」

そう言うとルカはソリを飛び降りた。

「これ、何処へ行くのじゃ?」

「あの子の所にです。
 僕の命に代えてでも、あの子は絶対に僕が助けます!」

ルカの瞳には清々しいくらいの希望が宿っていた。

「これ、ルカ! 待ちなさい!」

サンタクロースが止める声も今のルカには聞こえてはいなかった。



「ごめん、ごめん。スッカリ待たせたね」

「えっ? だって、今行ったばかりじゃないですか?」

「あっ、そうか。時間の感覚が違うんだった」

「えっ?」

「あっ、いや、何でも無いよ」


『絶対に助けるとは言ったものの、いったいどうしたら良いんだろうか?
 強い気持ちの結びつき・・・それはどう言う事なんだろう?』


「明日花ちゃんはさっき、絵本作家になるのが夢だって言っていたよね?
 どうして、絵本作家になりたいと思ったの?」

その問いに明日花の顔が一瞬曇った。
だが、俯いた顔を静かに上げるとニコッと笑顔を見せて話を始めた。

「私ね。弟がいたの。三つ違いだったわ。<空>って言うの。
 空は体が弱かったから外で遊べなくて・・・だから、いつも絵本を読んでいたの。
 絵本の中で色々な国に行ったり、いろんな冒険をしていたわ。
 そして、私に向かってキラキラ目を輝かせて言うの。
 『お姉ちゃん! これ凄いんだよ! ねぇ、知ってる?』
 絵本の中の話を私に得意気に話すの。
 空が夜、寝る時は良く私が絵本を読んであげた・・・」

「そっか」

ルカは返す言葉も見つけられないまま、ただ黙って聴いていた。

「でも、死んじゃったの。二年前になるわ。
 私と同じ病気だったって・・・
 おかしいわよね。『空のような大きな男になるように』って付けられた名前だったのに
 大人にもならないうちにお空に還って行っちゃった・・・」

「・・・」

「だからね。私は空のような子供達の為に絵本を書きたかったの。
 外で遊べなくたって、絵本の中でたくさん遊んでくれたらなぁ~って。
 絵本の中ではみんな平等なの。体の丈夫な子も、そうじゃない子も。
 お金持ちの子も、そうじゃない家の子も、みんなみんな夢を見られるような
 そんな絵本を書けたら素敵かなぁ~なんてね」

「うん、とても素敵だと思うよ」

「ありがとう。でも、もう本当の夢になっちゃった・・・」


寂しそうに微笑む明日花の言葉にルカの胸は”何か”に強く締め付けられるようだった。
今までに経験をした事がないような切なくて苦しくてどうしようもない気持ちが
胸いっぱいに溢れてきていたのをルカは鎮める事が出来なかった。

それが”どう言う感情”なのか?
それは同情なのか? それとも初めて知った恋心だったのか?
そんな事も経験の無いルカには知る由も無かった。

ただ、切なくて、苦しくて、何処か虚しくて、何かが熱くて
何も出来ない自分が悔しくて、理不尽な運命をただ呪うもやり切れなくていた。


『でも・・・どうしたら良いんだろう?』


そんなルカの様子に気が付いたのか、明日花はルカの手を取りながら言った。

「ごめんなさい。嫌な話を聴かせちゃったわね。ごめんなさい・・・」

「い、いや・・・そんな事はないよ」

ルカは明日花の手を握り返すと答えた。

「そんな事はない。でも、僕が何とかする。きっと何とかするから!」

「ありがとう・・・その気持ちだけで十分よ。
 でも、もうどうしようもないの」

「いや、そんな事は無いよ!」

「今夜は素敵なクリスマスイヴだったわ。
 優しい<サンタさん>にも逢えたし、私ってラッキーよね?
 ルカ、ありがとう・・・」

明日花は笑顔でそう言った。
だが、ルカはそれに答える言葉が見つけられないでいた。

「・・・」

「どうしたの? そんな哀しそうな顔はしないで。
 私、今・・とても幸せなのよ」

ルカは驚いて明日花に訊いた。

「えっ? 明日花ちゃん・・・見えるの?」

「ううん、感じるの。ルカの哀しそうな顔」

「明日花ちゃん・・・」

明日花の目から大粒の涙がひと筋流れ落ちた。

「おかしいね。幸せでも涙って出るんだね」

ルカは思わず明日花を抱き締めた。

「ルカ?」

「明日花ちゃん!」

明日花を強く強く抱きしめた。


その時だった。
ルカの身体が明るく光り出すと、その不思議な光は明日花を優しく包み込んでいった。


やがて、その光は明日花の部屋の窓から外へと溢れ出した。
辺り一面が昼間のように一瞬明るくなったかと思うと
その光は静かに消えていき、何事も無かったかのように
又、辺りは夜の風景に戻っていた。

事の次第を感じ取ったサンタクロースはソリの上で立ち上がると叫んだ。

「おー、ルカ! ルカ!! 何と言う事じゃ・・・」

その時、サンタクロースの頬に冷たいものが当たった。
いつの間にか雪が降り出していたのだ。

その雪に迎えられるかのように家の煙突から微かな蛍火のような光がひとつ。
ユラユラ揺れながら空へと昇って、やがて降る雪の中に消えて行った。




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