Neko

夢の汽車に乗って 2015年09月

プロフィール

yumenokisya

Author:yumenokisya
現住所 北海道十勝国

 好きな言葉は
『なんとかなるべさ』

 そう、生きてさえいれば
何とかなるもんです。。。
   


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人生(ドラマ)

どんな人の人生にも
一編や二編くらいは
小説に書けるようなドラマがあるという



生まれて数時間で命の灯火を消した赤子にも
百余命を生き抜いた老人にも
それぞれの生と命のドラマがある



「人生は長さじゃないよ」

そう人は言う

確かにそれは真実だ



”ごく普通の中流家庭に産まれて
 特に苦労もなく育ち
 ごく普通に学生時代を過ごし
 ごく普通に会社勤めをし
 そして
 当たり前に結婚をし
 当たり前に子育てをし
 当たり前に歳を重ねていった

 特に人生に波風も無く
 自分で波風を立てる勇気も無く
 自分を主張することもせず
 他人とぶつかることは避け
 他人より目立たないようにしながら
 たくさんの人や出来事とも
 上手く折り合いをつけながら生きていた”


もし
そんな人が主人公の映画があれば
それはきっと観客にとっては
退屈以外の何物でも無いかも知れない


果たして
そんな人の人生にも
ドラマと呼べるものはあったのだろうか?



「もちろんさ」

私は自信を持って答えるだろう



大河ドラマのような
壮大なドラマでは無かったかもしれないが

アクション映画のヒーローみたいな
そんな格好良い戦い方では無かったかも知れないが

ホームドラマのお決まりのような
家族内の揉め事は無かったかも知れないが

メロドラマのような
命を懸けた悲恋は無かったかも知れないが

大か小かの違いはあったにしても

何処か人生のひとコマを切り取った時
そこには必ずドラマがあるものだ


他人から見たら退屈な人生に見えたとしても
人には人なりの喜怒哀楽があり
そこには確かにドラマがある




普通に生きて
当たり前に歳を重ね
可も無く不可も無い人生を送る

むしろ
そう生きていくことの方が今は難しい時代

そんな人生がもしあったとしたら
それは或る意味
奇跡と言うに等しいことなのかも知れない

それをドラマと呼ばずして何と呼ぶだろう?

観客にとっては
山在り谷在りの起伏に富んだ人生の方が
ハラハラと手に汗を握ったり
ハッピーエンドな結末に
ホッと安堵をしたり出来て良いのだろうが
観客の為に
人は人生を送っている訳ではないのだから




ただひたすら自分の為だけに生きた一生
いつも他人のことだけを考えて生きた一生

その生き方は真逆ではあるけど
そこにも多かれ少なかれ
山坂は有っただろうし
そんな生き方を選ぶに至ったドラマが
きっと有ったことだろう

それを声に出して語るのか

或いは
黙して胸に秘めて生きるのか

或いは
「どうってことは無いさ」と
笑い飛ばしてひょうひょうと生きるのか

その生き方そのものがドラマになる


「そうだね。
 ドラマってのは
 人間そのものなんだろうね」



どんな人の人生にも
一編や二編くらいは
小説に書けるようなドラマがあるという



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「ねぇ、たまになぞなぞしようよ」

次女のそのひと言が奈落への始まりだった。

「おー、良いね。やる?」

珍しく一発で受ける長女。

「やろうやろう!」
「お父さんも当然参加ね?」

長女に急に話を振られた夢乃氏。
だが当然やる気は無し。

「んなもん、やるかよ。子供じゃあるまいし」

「あー、答えられないんだ?」
「だよね。まさかでも娘に負けたら恥ずかしいもんね」
「だね、ここは察してやろうか」
「そうだね」
「どうせ、答えられないもんね、頭がもう固いから」

そこまで言われて引っ込んでいられるほど
夢乃氏は大人ではなかった。

「てめぇらな。俺を誰だと思ってんだ?」

「おっ、やる気になった?」
「やる気スイッチ、オーン!」
「イエーイ!」
「それじゃ、お父さんから問題を出して良いよ」
「キャー、怖ーい、簡単なのにしてねぇー」

ニヤニヤする娘達。
早くも奈落への道が開かれようとしていることに
夢乃氏は全く気がついていなかった。

「あっ、でも。いつもアレは無しだよ。
 ダジャレじゃなくて、あくまでなぞなぞだからね」

「んなもん、言われなくても解っているわい!」

いや、夢乃氏は全く解ってはいなかった。
次女の言葉の意味。
<あくまでなぞなぞだからね>

夢乃氏は得意気に先生口調で切り出した。

「はーい、良いですか?
 それじゃ、第一問。
 先ずはこれ、小学生レベルのなぞなぞ。
 正解率はなんと98%!
 さぁて、君達は解るかな?
 <パンはパンでも食べられないパンは何ぁ~んだ?>」

先生風の夢乃氏に乗っかって
生徒よろしく勢いよく手を挙げる娘達。
付き合いが良いのはさすがに夢乃氏譲り?
しかし、そう簡単にことは収まるはずは無かった。

「超簡単、審判だよ」
「はーい! 短パン!」
「はい、じゃあ・・・ジーパン!」
「チノパンでしょ?」
「Yes,It's a JAPAN ! OK,Goodjob」
「それじゃ、サイパン?」
「いやいや、ルパンだって!」
「それなら、ショパンとか?」
「ダメだなぁ忘れてるしょ? ピーターパンだよ!」
「ミタパンじゃね?」

「・・・」

「あれっ?
 なんか黙っちゃったけど・・・先生、答えは?」
「まさかね、アレじゃないよね?」
「そんな、まさか。
 先生がそんな単純な答えのなぞなぞを出す訳ないじゃん」
「だよねぇ~」
「ねぇ、先生? 答えは何? 降参ですぅ~」

「むぐぅ・・・そ、それは・・・」

思いもよらぬ展開に苦しげに青ざめる夢乃氏。
何と答えたらこの場を上手く逃れられるだろうかと
額に脂汗を流しながら考えあぐねていたその矢先。
次女が再び手を挙げました。
しかも、明らかに演技と解るしおらしさで。

「間違ってたらごめんなさい。
 もしかしてフライパンですか?」

その瞬間、夢乃氏の顔には赤みが戻り
よほど安堵をしたのか明らかに喜びの表情が表れました。

『救われた!』

夢乃氏には次女が天使に見えたのです。

と、その時。
ニヤニヤしながら次女は言いました。

「あっ、やっぱり違うんですね?
 フライパンって揚げパンのことですものね?
 じゃあ、何だろう?」
「何だよ、お前。それ当たり前過ぎるし。
 そんな訳ないじゃん」
「だよねぇ~ えへへ、めんごめんご」
「先生! 答えを教えてください!」
「知りたーい!」
「私も!」
「ねぇ、先生?」
「降参でーっす」

天国から地獄とは
まさにこういう修羅場を言うのでしょうか?

そう、夢乃氏にとっては奈落の展開。

その時、初めて夢乃氏は気が付いたのです。
娘達がしたかったのは
決して、なぞなぞなんかではなくて
単なるヒマつぶしだったということに。

「おめぇらなぁー、ぶっ殺す!」

夢乃氏が怒り心頭で
拳を振り上げるその仕草をするやいなや
口々にはやし立てる娘達。
いや、小悪魔達。

「キャー、怖ーい」
「可愛い子供虐待、はんたーい」

「誰が<可愛い>だって?」

「私、私!」
「いや、私でしょ!」
「二人ともじゃね?」
「だね」

狭い部屋の中を追いかける夢乃氏。
キャッキャと逃げ回る娘達。

「待てー、こら!」
「やだよー」

ほどなく息切れをしてうずくまる夢乃氏。
日頃の体力不足がはからずも露呈。

「ぜいぜい、はぁはぁ・・・てめぇらな・・・」

澄ました顔で次女は答えた。

「だって最初に言ったしょ?」

「何がだよ?」

怪訝な顔の夢乃氏。
笑いを堪えきれずに答える次女。

「だからぁ、悪魔でなぞなぞって」

「あくまで?」

「そう、悪魔で」
「いや、それは高度過ぎてお父さんには理解無理」

長女は次女に言った。

「そっか、だよね」

頷く次女。

「そうそう」
「あー、面白かった」
「たまには良いレクだね」

まだ意味の解っていない夢乃氏。

「あくまで? あくま・・・あっ!?」

張り巡らされた伏線の意味。
更に奈落のズンドコにつき落とされた夢乃氏であった。

大人のみなさん。
家庭内のなぞなぞには迂闊に近寄っちゃいけませんよ。
小悪魔達がここぞとほくそ笑んでいるんですから。





*夢乃家日和は架空の家族の日常です。
 ここに登場をしている夢乃家の面々は
 例えば、落語の長屋噺に登場している
 熊公、八っつぁん、ご隠居さんであり
 そのちょっとトボけた日常を
 ホンワカした気持ちで読んで頂ければ幸いです。



”祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
 奢れる人も久しからず。唯春の夜の夢の如し。”
    *『平家物語』序文より


くぅー! 沁みるねぇー(しみじみ)

何かね。

この、なんての?
詩みたいなのを読むとさ泣けてくるんだよね。

栄枯盛衰、盛者必衰・・・

昔の人はよく言ったもんさね。


おいらにもこんな日が来るなんてさ。
五~六年前にはちーっとも考えられなかった。

別に、奢ってた訳じゃないんだけどね。


信じないかもしんないけどさ。

こう見えて
おいら達ネズミはさ。
ちょっと前までは
けっこうな人気者だったんだよね。

あっ、人気者ネズミってもね。

あのデカい舶来遊園地の
大きな丸い耳のネズミじゃないよ。

まぁ、仲間にゃ舶来産も国内産もいたけどね。


ネズミ算って言葉があるけど
ホント、そんな感じで
アッと言う間においらたちは世間に広まった訳さ。

もうひと昔前の話になるけどね。

大概の家に一匹くらいはいたかな。
会社や工場なんかだったら
もう何百とか何千とか
仲間達が我が物顔で所狭しと走り回っていたもんさ。

ってか、走ってたのは狭い場所ばっかだったけどね。

でも、あの頃は良かったねぇー

まさに、ありゃ縦横無尽ってやつだったね。
そうやってさ。
随分、人間にも尽くしたつもりさ。

たまにおいらがいなくなると
人間はおろおろしちゃってさ。
もう、どうして良いか解からないって風でね。

だから、おいらなんかも大事にしてもらったよ。

「ネズミ様々」なんて拝まれることは
まぁ、さすがに無かったけどさ。

相棒っての?

なんせ、おいらが頑張って働かなきゃ
人間のノーリツってやつが極端に下がったからね。

仕事になんないんだもの。


それがどうだい?

近頃はさ。
そんなことなんか人間はすっかり忘れちまってさ。


おいらがいなくても自分でスーイスイなんてね。
仕事が出来るようになっちまったらしいよ。

で、気が付いたら
おいらも暗い箱の中に閉じ込められちまって・・・

もう、見向きもされないんだぜ。

こんなのあるかい?
ひどいと思わない?

朝昼問わずに、いや夜中だってさ。
一生懸命に人間の指示する通りに走り回ってたのにさ。
身を削って走り回った仲間だっていたのに
用が無くなりゃポイってかい?

そりゃないぜ。

あいつらみんなどうしてんだろう?
みんな今頃は肩身の狭い想いをしてんだろうなぁ~

時代っちゃ、そうかもしんないけどさ。
つい、愚痴のひとつも言いたくなるってもんさ。





「あー、有った、有った!
 こんな箱の中に有ったんだなぁ~
 やっぱり、俺はこれじゃなきゃ仕事にならんわ。
 今時のタブレットなんか、何か頼りなくってさ。
 指でスーイスイって感覚が良く判らんし。
 これこれ! このポチッと感が良いんだよな。」


えー? マジっすか?

くぅー、泣けてくるねぇー

よっしゃ、そんじゃま。
もうひとっ走り、頑張るか!

ポチッ、ホレもういっちょ、ポチッ、ポチッとな♪




*私は仕事ではiPadも使っていますが
 細かい入力や選択があると
 やはり指での操作は今一感がありますね。
 えっ?
 「お前の指が太いからだろ?」ですって?
 ふん! 放っとけ!(笑)
 スタイラスペンも使ってはいますがこれも今一。
 拡大、縮小、右クリック、左クリックの出来る
 スタイラスペンってないのかな?
 あったら欲しいわあ~
 因みに、私のiPadはワイヤレスキーボードも必須。
 (何のためのタブレットやねん?(笑))

 パソコンは当然マウス派です。
 パソコンでタッチパネルって意味が解りません(^-^;



幸せとは

時間という現実は残酷ですよね。

何がといって
多分、多くのみなさんが上げるのは
<時間は決して戻らない>
と、いうことでしょう。

人生は幾つになってもやり直しが出来るとはいうけど
過去に戻ってやり直しが出来る訳ではありません。

気が付いた<その瞬間>から
確かにやり直すことは出来ますが
それは、そこからの修正にすぎなくて
過ぎた時間はやはり戻りはしません。


時間が経つと人間は誰しも老いていきます。


老いは
人間からひとつ、ひとつと出来る事を奪っていきます。


時には人間から考える力さえも奪ってしまいます。

もちろん
どんなに健脚を誇った体力だろうと
どんな美貌さえも時間の前では無力です。

そこに例外はありません。

昔から不死鳥伝説等がありましたが

時の権力者達がこぞって
不老不死を追い求めた気持ちも今なら解るような気がします。



ただ、それが本当の幸せなのかは判りません。


もし、自分一人だけが不老不死を手に入れられたら?

幸せだと喜べるのは
おそらくは最初の数年間だけでしょう。

その後に待っているのは恐ろしいまでの孤独かもしれません。

愛する人が出来る度に
その愛する人の死をただ見ているしか出来ないとしたら?

それを何度も繰り返さなければならないとしたら?

きっと、耐えられませんよね。


そう色々なことを考えていくと
時間が過ぎて行くのは決して残酷なことではない。
そう思えてきます。

時間が止まったり
戻っては悪戯に繰り返すことの方が残酷です。

それじゃ、上手い具合に
幸せな瞬間で時間が止まったり
幸せな時間だけを繰り返してくれるなら?

でも、それもやはり幸せとは呼べないでしょう。

人間にもし、<慣れ>という感覚がなければ
永遠の幸せと呼べるのかもしれませんが
残念ながら人間はそういう風には作られてはいないのです。

幸せな時間はやがて
ただ褪せていくのを待つようになっていくでしょう。


浦島太郎の玉手箱の教訓は

乙姫の言いつけを守らなかったことへの戒めなんでしょうか?


それとも
怠惰に過ごした時間への戒めだったのでしょうか?

でも、私は思いたいのです。

地上に戻った浦島太郎が
普通の人間に戻れるようにとの乙姫の優しさだったのだと。


時間。

つまりそれは
人間が人間である為に受け入れざるを得ないもの。

過ぎて行く時間はむしろ<生>そのもので
その中に幸せも不幸もあるのだとしたら
それは決して残酷なだけではなくて
例えば、成長も老いも人間が人間である証に過ぎないのです。

受け入れざるを得ないものを受け入れる。
そのことを素直に受け入れられる人が幸せな人。
そう言えるのかもしれません。



例の安保法案ですが
私は100%反対はしません。

反対はしませんが
今回のやり方には100%反対をします。

現在の世界情勢諸々を考えると
最早、日本だけが
<お金を出せばそれで良い>
と、いう時代ではありません。

それは確かです。

でも、だからといって
時の内閣(与党)の法解釈次第で
何でも出来るという考え方は
どう考えたって絶対に間違っています。

採決の後、主要閣僚が
「強硬採決ではない」
と、言っていましたが
誰がどう見ても
あれは強硬採決以外のなにものですありません。

多くの憲法学者も反対をしていましたが
それ以上に
多くの国民の理解が得られていないのですから。


私は憲法は元より
法律というのは国語ではないと思っています。

それが小説であるなら
読み手の感性や読み解き方で
その作品の解釈や感想が変わるのは当たり前です。

でも、法律は小説ではありません。

法律はむしろ数学なのです。
で、あるべきなのです。

誰がどう読んでも、どう解釈をしても
そこに書かれている言葉の意味(答え)は明瞭です。

法の安定性とはそういうことだと思っています。

ところが今回は

「1+1=2である」と書いてあるのに
「1+1=田でもある」と
まるで
ナゾナゾの答えのような解釈をしているに等しいのです。


ましてや
自衛隊員の身に何かあった場合は
保証を手厚くしたらそれで良いという問題でもありません。

いったい何人の犠牲が出たら
政府や与党は考え方を変えるのでしょうか?

それでも一旦走り始めたものは止められないのでしょうか?


法律には時代が変わっても
絶対に変えちゃいけないものがあります。
一方で、時代に合わなくなったものは
例え、それが憲法であろうと変えるべきです。

本来、この安保法案は
解釈によって変えて良い性質のものではなくて
本当に時代が要求している法律なのであれば
堂々と改憲論議から進めるべきでした。

でも、正攻法で行っても
受け入れられないことが解っているので
「それじゃ解釈で変えちまえ!」

これが今回の本質です。


良く「現在は国際状況が・・・」
と、いうことを理由にして
安保法案を正当化しようとしている与党議員もいますが
それは法解釈を変えてでも何が何でも
国際貢献が第一優先だという根拠にはなりません。


正々堂々と
「おかしいものはおかしい」
そう言えない議員は日本には不要です。

おかしいなら「おかしい」と言えば良い。

その上で
何が問題なのか?
その為には何をどうしたら良いのか?

それを議論をして国民にしっかりと伝え
国民の信を得て物事を進める。

それが立憲民主国家の議員の在るべき姿だと思います。

国民の意見よりも
党議拘束が優先されるのはおかしいのです。

議員はあくまでも国民の代表なのですから。

国民は議員に全権を付託している訳ではありません。


それでももし
どうしても強硬をしようとするなら私は問いたい。

「あなたの息子や娘、或いは孫を自衛隊に入れますか?
 国の為に紛争地の最前線に行けと命令出来ますか?」

或いは、今回賛成をした議員の皆さんに言いたい。

「もし、自衛隊を派遣することになったら
 あなたが先頭に立って現地に行って下さい。
 そして、身を挺して自衛隊員を守って下さい。」

それが出来るなら
私は自分の主張を収めて逆に拍手を送ります。



世の中はシルバーウイークなんだとか。

いやね、そういや私も五連休なんですが
これは
ほんの二ヶ月ほど前に知ったことでして。

或る日
何気にカレンダーを見ていた時に気が付きました。

「あれ? 九月のこの五連休って何?
 えー!? マジ?」

なんて浮かれたのは私だけですか?

「シルバーウイークって何?
 今までそんなのあったっけ???」

そう思ったのは私だけですか?

「去年はあったっけ?」

記憶にないのは私だけですか?


誰がそう名付けたのかは解かりませんが
(調べてもいないので)
五月のゴールデンウイークに対しての意味合いと
連休の中には敬老の日が入ることから
シルバーウイークにした。
と、そんな感じでしょうか?


まぁ、大型連休は個人的には
もちろん<熱烈歓迎>嬉しいのですが
仕事をしている身としては
大手を振って喜んでばかりもいられません。

九月と言えば会社では上半期の決算月です。
仕事への追い込みは当然ですが
加えて
上半期を振り返っては目標の修正をしたり
やれ報告だ、ほれ打ち合わせだ、そら会議だなんだと
身体も心もひとつしか持ち合わせていない
ごくごく平凡な私としては

「時間が足りねぇー!」

と、アタフタするのもこの月です。

そんな時期に、しかも月も後半のこの大事な時期に
降って湧いたような五連休。

みなさんにおかれましては如何お過ごしですか?

私は五連休明けの
会社での地獄絵図を想像すると夜も眠れません。

なので
夜更かしをしながらパソコンに向かっています。

「お前、それっていつもじゃん?」

と、仰せられる?

いや、いつもとは大違いですよ。
なんせ、普段なら休みは日曜日で終わりでしょ?
それが水曜日まで休みなんですよ。

気持ちは大違いです。

余裕綽々! 現実逃避! 毒を喰らわば皿まで!
今、考えても仕方のないことは考えない!
妄想闊歩! 唯我独尊! なるようになる!

ね?
気持ちは全然違っているでしょ?


頃は秋。
秋と言えば私なんかは食欲の秋ですが
世間一般ではスポーツの秋でもあります。

国内、海外問わず
大小様々なスポーツの大会が行われています。

金メダル・銀メダル・銅メダルとありますが
この中で唯一
負けて貰うのが銀メダルです。

銅メダルも
準決勝で負けて貰うという場合もありますが
殆どは三位決定戦で勝つと貰えます。

でも
銀メダルだけは勝って貰うということがありません。

もちろん、銀メダルだってすごいことです。
二番ですからね。

もっと喜んでも良いはずなのに
銀メダリストの笑顔は98%の笑顔・・・
そんな風にも見えてしまいます。

銀メダリストの悲哀とでもいうのでしょうか?
そこに込められた悔しさは
きっとアスリートにしか解かり得ないのかも知れません。


銀の元素記号は「Ag」
これはラテン語の「argentum」に由来し
意味は「明るい」「輝く」

可視光線の反射率は金属中で最大を誇り98%と高く
その美しい金属光沢は古来人々を魅了してきました。

遥か大昔のことではありますが
金よりも銀の方が価値が高かった時代もありました。

金製品の上から
銀メッキを施したなんてこともあったそうです。

これは自然金に対して自然銀の方が稀だったからです。

ところが産出技術、精錬技術が発達してくると
立場は逆転しました。

産出量が増えるに従って安価になっていったのです。
しかも、純銀は柔らかすぎて酸化もしやすかったので
他の金属との合金として用いられることが多くなり
益々大量に生産をされていくようになったのです。

その頃から金の方が上という価値観が出来上がりました。


「明るい」「輝く」の意味を持ち
尚且つ、美しい金属光沢をもっているにも関わらず
銀はどこか悲哀めいた風に用いられるのは
そんな銀の歴史と関係があるのかも知れません。

銀メダリストの悲哀と書きました。

シルバーシートに代表されるように
シルバーは老人を指すようにも使われます。

でも、それは悲哀なのでしょうか?

銀メダリストにはいっそう輝く未来を。
老人には尚いっそうの明るい未来を。

銀は
もっと上を目指せるということを
もっとその先にある幸せを
私達に教えてくれてもいるのです。



なぁ、あれからどれくらい経つ?

 そうだなぁ
 二十年・・いや、もう三十年だよ。

そうか・・・
もうそんなに経つんだ。

 なんだ?
 未だ、気にしてるのか?

いや
そういう訳ではないけどね。
でも
昨日のことにように思い出すことがあるんだ。
今でもね。

 もう良いだろ?

そうだな。

 そうさ。

時の流れ・・・

 ん?

時の流れが与えてくれるものは何だろう?

 時の流れが?
 そうだなぁー
 しいて言うなら<寛容>・・・かな。

寛容?

 あぁ
 時が心の傷を癒してくれるだとか
 時が忘れさせてくれるとか言うだろ?
 覚えている記憶に対して
 『もう楽になって良いよ』ってさ。
 時が赦してくれるんだよ。
 まぁ、お前の場合は
 忘れるのが下手みたいだけどな。

よせよ
別に何でも覚えている訳じゃないさ。

 それから、んー 何て言うかさ。
 時が経つと記憶が曖昧になったり
 逆に、より鮮明になったりってあるだろ?

あぁ、あるね。

 どうしてだと思う?
 新しい記憶なのに曖昧になったり
 古い記憶のはずが鮮明に覚えてるなんてさ。
 そんなことだってあるけど
 普通は古いモノから忘れて当たり前だよな?

そうだね。
どうしてだ?

 時の流れが寛容さを与えてくれる代わりに
 人から奪っていくモノがあるからだよ。

奪っていくモノ?
それはなんだい?

 それは<真実>だよ。

真実? どういうこと?

 忘れてしまいたいとか
 絶対忘れたくないとか
 多かれ少なかれ人にはあるよね?

うん、そりゃね。

 でも、残念ながら
 人は憶えていたい記憶ばかりを
 覚えていられる訳じゃないんだ。
 本当は忘れてしまいたい記憶ほど
 忘れられないものなのさ。
 良く「脳裏にこびり付く」とか言うだろ?

あぁ。

 例えば別れた人を忘れようとする時
 人は何を考えている?

それは・・・別れた人のことじゃないか?

 そうだね。
 考えている人のことを忘れられると思うかい?

いや、逆に余計な想い出まで思い出すかもね。

 そうさ。
 そういうもんなんだよ、人の思考回路ってさ。
 でもそれじゃ
 人はいつまで経っても前へ進めないだろ?

うん。

 そこで、人は時の力を借りて
 <真実>を記憶の外に捨て去ろうとするんだ。
 言ってみれば、人間の本能みたいなものかな。
 <真実>が記憶から除外されるから
 その近辺の記憶が曖昧になるのさ。

・・・

 逆に作用・反作用みたいなもので
 どうしても忘れたくないと言う気持ちが強いと
 『これは良い記憶なんだ』と
 自分の中で記憶を美化していくんだ。
 でも、それは
 あくまで美化した記憶だから真実ではないのさ。
 つまり、時が真実を奪うってそういうことさ。

それじゃ
時は人に寛容を与え人から真実を奪う。
それは解った。
でも、何の為にそんなことを?
古い記憶から忘れていくんじゃダメなのかい?
パソコンファイルの上書き保存みたいにさ。

 人が今日も明日も生きていく為に必要なモノ。
 それは過去の経験とかね、記憶とかさ。
 そういうモノが積み重なって今があるんだけど
 そこが人間の機微というか難しいとこなんだ。

と、言うと?

 新しい記憶と古い記憶が両方ないと
 人の精神って活性化されないように出来ているんだ。
 でも、全部を覚えていられる程の容量はない。
 そこで、本能的に記憶をフィルターに掛けるんだ。
 良い想い出も悪い想い出も
 新しい記憶も古い記憶もみんなごちゃ混ぜにしてさ。
 そして、
 無意識の中でフィルターを通して選別をする。
 それを自動的にやってくれるのが
 きっと<時の流れ>ってやつなんだろうな。

ってことは
時の流れと人間の本能ってリンクしてるっていうのかい?

 リンクというより
 そうだな、人間の本能が時の流れを上手く利用している。
 そう言った方が良いのかもね。
 生きていく為にね。



 ワイワイ、ガヤガヤ・・・

 すったもんだ・・・ホイサッサ・・・

 でさ・・・あーだ、こーだ・・・



議長の太陽が着席をすると
<オホン>とひとつ大きく咳払いをした。

「静粛に!
 これから次季の割り振り会議を始めます。
 先ずは・・・今回は秋の番でしたね?
 では、主張があればどうぞ」

秋は促されて起立をすると一同を見渡した。
そして静かに語り始めた。

「夏さん、先ずはお疲れ様でした。
 ただ、あなたは少々無茶が過ぎましたね。
 あの猛暑日の連発はやり過ぎです。
 お蔭であちらこちらで集中豪雨も起こるは
 竜巻は起こるは、台風は我が物顔で闊歩するは
 国民の皆さんも夏にはもうへきへきしていることでしょう。
 今年ほど私が待ち望まれている年は無いのです。
 そこで私は提案します。
 今年の秋はズバリ五か月を要求します!」

「な、何を勝手なことを!
 お前だけの季節じゃないんだぞ!」

興奮で顔を赤らめて叫んだのは冬だった。

「だいたいだな!
 お前が五か月も居座っていたら俺はどうするんだ?」

秋は涼しげに言った。

「冬さん、良いですか?
 ハッキリ言って
 誰もあなたを待ってなんかいませんよ。
 寒い、冷たい、おまけに雪ですか?
 北国の人はストーブの灯油代もかかるし
 何より、雪かきを喜んでいるでも?
 冬道の運転をみんな楽しんでいるとでも?
 そんなことは無いでしょ?」

「だ、黙れ!
 北国の人達は
 ウインタースポーツが出来るのを心待ちにしているぞ!
 雪祭りだって観光客は沢山来てるじゃないか」

「それは一部の人ですよ。
 だからって冬が沢山な必要は無いじゃないですか。
 山にだけ雪を降らすとか、違いますか?
 ねぇ、みなさんはどう思います?」

秋は他の季節に問いかけた。
するとそれに夏が答えた。

「秋さん、あなたは横暴だ。
 日本ほど四季の美しい国は無いのです。
 四季それぞれのバランスが取れていればこそ
 みんな安心して暮らすことが出来るのです。
 その意味では夏は暑く冬は寒く
 その合間を春と秋が上手く調整する。
 それが自然の道理です」

「悪いけど、今年のあなたに
 道理を問う資格はありますかね?
 今年の夏はいつものあなたでしたか?
 ちゃんとバランスを取っていたのですか?
 あれで? 私にはとてもそうとはね」

「そ、それは・・・」

「まぁ、まぁ」

そう言って話に割ってきたのは春だった。

「確かに、今年の夏さんはやり過ぎでした。
 あー、夏さんはちゃんと反省してくださいよ?
 でも、だからと言って
 秋さんが長く季節を取ったら
 今度は冬さんはどうすると思います?
 次の会議で、こう言うに決まっています。
 『秋のせいで俺は二か月しか冬を出来なかった。
  今年は六か月は譲れないぞ!』ってね。
 みんながそんな風に
 自己主張ばかりしていたらどうなりますか?
 困るのは日本国民のみなさんですよ。
 秋さん、違いますか?」

「う、うん・・・まぁね」

「私達は愛してくれる国民があってこその
 日本の四季じゃありませんか?」

「しかし・・・わ、解ったよ。
 それじゃ、今年の秋は三か月。
 これは譲れないギリギリの線だ」

議長の太陽は言った。

「冬さん、いかがですか?」

「しかし、それでは私の立場が!」

「良いじゃありませんか。
 秋さんと冬さんそれぞれ三か月ということで。
 国民のみなさんには夏のお詫びを兼ねて
 <今年の冬は暖冬>ということで告知しましょう」

「し、しかし・・・」

不満そうなのは冬。
何とも納得がいかない様子です。
無理もありません。
今までは東北・北海道は冬の独壇場で
誰も文句は言わなかったのですから。

太陽は一同を見渡すと
又、<オホン>とひとつ咳払いをした。

「では、今年の秋と冬は三か月づつということで
 みなさん、異論は無いですね?
 それでは広報さん、至急気象協会に連絡を。
 <今年の秋は長く冬は暖冬傾向でしょう>
 以上で・・・」

「ちょっと待った!」

手を高々と上げたのはやはり冬でした。

「どうしました?」

冬は立ち上がると太陽に向かって言った。

「なんだ? 暖冬、暖冬ってさ。
 良く良く考えたらだな。
 お前がシッカリしないから
 温暖化なんて羽目になったんじゃないのか?
 温暖化にさえなってなかったら
 俺はもっともっと北国で悠々と出来たのに。
 ヤイ、太陽さんよ! どうしてくれるんだ?」

「そ、そんなことを言われても・・・」

しどろもどろになりながら太陽は答えた。

「わ、私だって、何も好き好んで
 暖冬にしたい訳ではありませんからね。
 温暖化と言えば私だって被害者なんですよ。
 私だって冬くらいは力をセーブしたいんです」

「じゃ、温暖化の責任は誰が取るんだ?」

冬はそう言いながら一同を見渡した。

「・・・」

そこに夏がそっと手を挙げた。

「あの・・・
 そもそも温暖化って人間が撒いた種ですよね?
 なら、別に私達が気にしなくたって
 好きなようにやれば良いんじゃないですか?」

「そうは言ってもだなぁ・・・」

と、太陽は渋い顔。
春は大きく頷くと一同を見渡しながら言った。

「いや、夏さんの言う通りかも知れません。
 これは
 我々日本の四季の存続に関わる大問題です。
 このまま温暖化を放っておく訳にはいきません。
 我々だってペースを乱されたくはありません」

「じゃ、どうするつもりなんだ?」

「確かに夏さんはやり過ぎでしたが
 人間に事態の収拾が付けられないなら
 そう言うのも必要なのかも知れません。
 人間が温暖化を危険だと認識するように
 いっそ秋さんは四か月で冬さんは二か月。
 その代わり冬さんは思いっきり暴れて結構。
 日本海側には豪雪、太平洋側には極寒とかね。
 それから秋さんには台風の連波と
 その後は秋雨前線を停滞させてもらいましょう」

「なるほど」

「じゃ、気象協会には何て通達する?」

「<台風から秋雨前線と続く長い秋の後
  冬は短いけど北極が引っ越してきます>
 こんなところで良いんじゃないですか?」

「異議無し!」




なんてことにならなきゃ良いのですが。

異常気象が「例年並み」にならないように
ただ祈るばかりです。


 併せて、台風被害や
 この度の豪雨被害に遭われた皆様には
 心よりお見舞いを申し上げます。


せめて今年の冬は穏やかな冬になりますように。





あなたのエクボ

好いた目で見りゃあばたもエクボなんてぇ申します。

みなさんにも覚えがあるでしょ?


ポッテリと出たこのお腹も
結婚前は
「このプニプニの触り心地が好きよ。
 プーさんみたいで可愛い♪」
なんて言ってた君が・・・

あれから三十年 ←きみまろ風に言ってみた

今ではアタシが言っています。

「お前さぁ、少しはダイエットしたら?
 そのプニプニ、胸も腰も同じじゃん。
 って、ドラえもんかい?」


いえね、アタシなんざぁ
子供に脛を削られ
会社に給料を削られ
嫁には命を削られ・・・

おっと、ここだけの話にしといて下さいましね。
アタシだってもう少し長生きをしたいんですから。


ともあれ
結婚したての頃のアタシは確かにプニプニで

「お前、幸せ太りってやつだべ?」

とか周りに冷やかされちゃって
いやぁ~本気で照れてましたが

あー、何だかとっても懐かしぃ ←遠い目


それが今じゃ見る影もありません。

戦後に強くなったモノはストッキングと女性
なんて言われてましたが。

結婚前はあんなに優しかった妻。
気が付けば豹変?
でもって、妻は子供達を味方に付けて
いつの間にか
多勢に無勢? 孤立無援? 四面楚歌?

わーい、三冠王だぁ~♪

って、喜んでどないすんねん!


家の中での勢力も立場もすっかり形勢逆転。

それに比べて
その間にアタシの身方に付いたのは
中性脂肪に悪玉コレステロール・・・

って、放っとけ!


でもなんですね。
立場が変わると体形も逆転するもんなんですね。

これを専門用語で
「年次における力学的反比例」と言うそうですが。

(USOですよ)


あの頃は君のエクボが大好きでした。

いや、エクボだけじゃなくって
君のどんなところも可愛く見えたもんです。


「ごめん、寝坊したから今日は弁当無しね」

そっかぁ~
今日はアタシの好きなモノを食べなさいってことね?
なんて優しいんだぁ~

「ごめん、Yシャツにアイロンをかけてないわ」

まぁ、着たら同じだし。

「えー?、あんたの晩御飯作ってないよ」

そっかぁ~
最近、メタボ気味だったから
痩せるように気を遣ってくれているんだね?
うー、その優しさに涙ちょちょぎれです。

「あんた、私がお風呂に先に入るから後にしてね」

だよねぇ~
一番風呂は肌を刺激するっていうもんな。
結婚をしてから一番には入ったことがないけど。
それか、あれだな。
最後にゆっくりと入って疲れを癒してってことだよね?

そうそう!
アタシの洗濯物も
君は棒っきれで洗濯機に入れてたよね?
あれは
それ以上汚しちゃいけないって配慮だったんだよね?


ふぅ・・・←溜め息ともとれる感慨に耽るの図


までも

どんな君の台詞も態度も
可愛かったから腹も立たなかったさね。

あの頃は・・・ね。


あれから三十年 ←またまた、きみまろ風に

今やエクボがホントのあばたになってしまいましたね。

何処に行っちゃったんでしょ?
あなたのエクボ。


・・・って

もしかして・・・最初から無かった?

そう見えていただけ?

アレか?

あばたもエクボってやつ?


・・・


マジか? ←やっと気が付いた人




<作者注>

本編はフィクションであり
実在する何処の地方の
如何なる家庭とも一切関係ありません。

世の多くの既婚男性のシアワセと
世界平和のためにココ強調でございます(笑)



「こんなに傍にいるのに
 心はまるで何万キロも離れているみたいだね」

それが君の最後の言葉だった。


そんな風に君が思い続けていただなんて
僕は最後まで気がつかなかった。

僕の言葉が足りなかったのかもしれないし
僕の思いやりが足りなかったのかもしれない。

もしかしたら
言葉よりも思いやりよりも
君は
僕のひとつの行動が欲しかっただけなのかもしれない。

歯車が一度狂い始めてしまったら
何を言っても
それは言い訳にしか聴こえなかったんだろうね。


僕は思い当たる全てのことを
ひとつひとつ心に思い起こしては
そこに黄色のマーカーを引いて自分に確かめた。

「あれは・・・あの時は・・・」

やがて黄色一色に塗られた僕の心は
夜空に寂しく浮かぶ満月になった。



暗い闇の中 ぽっかり浮かんだ満月。



月が明るければ明るい程
周りの星は見えなくなっていく。

もどかしい月のジレンマ。


だけど
満ちた月ならいつかは欠けていくだろう。

そうしたらきっと
今は見えなくなっている周りの星たちも
また、見えるようになるはずだね。


僕は部屋の灯りを消すと窓を開けて月を探した。

流れる雲に見え隠れして
朧な月は色を変えていった。

何時間もずっと見ていたような気がする。
いや、そんなに長い時間じゃなかったかもしれない。

だけど、もうそんなことはどうでもいい。

月がどんな色に見えたとしても
もう黄色のマーカーはいらない。

やっと気が付いたんだ。

僕に足りなかったもの。
見えるものしか見ていなかったこと。

大切なモノの本質はそんなところにはないのにね。


もどかしい月のジレンマ。
それは僕が作った愚かな僕自身だ。



message in a bottle

君の荷物が運び出されて広くなった部屋。

どうしてだろう?
座る場所も歩き回れる場所も増えたのに
何故だか居心地が悪い。

いや、分っている。

広くなったのは部屋だけではなくて
ポッカリと空いた心の隙間。


窓から見える夕暮れの街並。
見慣れた景色が今は空々しい。

そんなことを思いながら
それでも時を忘れて
僕はぼんやりと窓の外を眺めていた。


退屈な時間も物憂い空間も
いつも君が埋めてくれた。

いつも明るくあっけらかんとしていて
時々、「空気を読めよ」って思う時もあったけど
君の空気の読めなさに逆に救われていた。

それは確かに否めない。

いや

そんな風に振る舞っていたのも
たぶん、君一流の優しさだったんだろうか?


壁に残る写真の跡。

いつもならファッション雑誌が
無造作に置かれていたテーブル。

妙に片付いたその広さ加減が
僕を余計に落ち着かなくさせていた。

やがて

お喋りな想い出たちが
思い思いに勝手なことを話し始めた。


「あっ、そう言えばね」

「そうそう!」

「ねぇ、知ってる?」

「ねぇ、今度さ」

「あれ、面白かったね」

「ねぇ、笑っちゃうでしょ?」

「サイコー!」

「ねぇ、コーヒー飲む?」


僕はいたたまれずに耳を塞いだ。


コーヒーか・・・
そういえば、何処にあったっけ?

僕はいつもブラックで、しかも濃いめ。
君はミルクをたっぷりだったね。


僕は台所に立ってコーヒーの在りかを探した。
が、それは案外簡単に見つかった。

キッチンの引き出しの中
開封をしたコーヒー豆の封が
セロテープできちんと留められていた。

僕はそのセロテープを剥がすと
コーヒースプーンにふたつ分の豆をすくって
手挽きのミルでガリガリと挽いた。

ほのかに立ち上るコーヒーの香り。

「これが最高なのよね」

また、君のそんな言葉が脳裏を過った。

早くもかなりの重症だ。
<リハビリ>期間も長くなるかもな。

やれやれ・・・

あっ、そうだ。
とりあえずはコーヒーを入れなきゃな。
もう豆は挽いてしまったし。

香りが逃げないうちに。


あれっ? ドリップペーパーは?
豆の入っていた引き出しには入っていなかった。

僕は台所を見渡した。

何処だ?
君なら何処にしまう?

すぐに出せて、しかも絶対に湿けらないところ?

そうだ、食器棚の引き出し?

僕は食器棚の引き出しを端から開けた。
でも、ペーパーは見つからなかった。

もちろん
上の段のガラスの開き扉を開けても入っていなかった。

ふと目に入ったお揃いのコーヒーカップ。

また、いたたまれない気持ちになって
僕は慌てて開き扉を閉めた。


何処だろう?

僕はミルの中で挽いたままになっているコーヒーの粉が
今にもその香りを失くしていくであろうことに
気が気ではなくなっていた。


有る訳がないと思いながら
何げなく食器棚の下の開き扉を開けると
そこに空のワインボトルが置いてあった。

今年の僕の誕生日に君が奮発をして買ってくれたワイン。
でも、半分以上は君が美味しいって呑んじゃったっけ。

僕はそのワインボトルを見ながら思わず苦笑した。

記念に取ってあったのかな?
そう思いながら
濃い青色のワインボトルを手に取ると
その中に何かが入っていた。

紙?

ボトルを逆さにして振ってもそれは出てこなかった。

考えた挙句に僕は割ってみることにした。

どうせ、最後に君が書いた僕の悪口だろう。
割ったってどうってことはないさ。


僕はキッチンにまな板を置くと
そこにワインボトルを横にして置き
その上からタオルをかけて金槌で軽く叩いた。

小さく<カチャ>っと悲鳴をあげただけで
思いのほか、簡単にボトルは割れた。

タオルを外すと
割れたボトルの中から出てきたのは一枚の便箋だった。

そこには見慣れた君の文字でこう書かれていた。

「ごめん、ドリップペーパーは買いに行くヒマがなかったの」


えー!? それはないよ!

そんな・・・何でだよ?

何で?


何で・・・僕の行動がそんなに判るんだよ?


挽いたままのコーヒーの香りが逃げていく。

ダメだ!


僕は玄関に急ぐとスニーカーをつっかけたまま駆け出した。

もちろん、ドリップペーパーを買いにいく為じゃない。
君を引き戻す為にだ。



ミラーボールが止まりスポットライトが消えて
会場の明かりが眩しく灯る

かかとの折れたガラスの靴を脱ぎ捨てて
シンデレラは帰りを急ぐ

白雪姫は飲みかけのシードルを一気に飲み干した

酔い潰れた眠りの森の美女は
壁際のイスにもたれかかるように眠っている

パーティは終わったよ



取り残された偽物王子達は
おそらくは物語の中ではその他大勢の娘達に
手当たり次第に声をかけて
それでも尚、今夜の獲物を狙ってる

都会は夜の方が華やかなんだってね
それは何故かって?

「嘘が隠せるからさ」

男も女も魔法が好きで
騙したつもりが騙されて

パーティは終わったよ



君を送るタクシーの中で
酔っているのか?フリなのか?

独り言のように君は呟いた

「もう、待つのも疲れたわ」

気にも留めずに
僕は楽しかったパーティの話を続ける

付き合いが長くなるほど
男と女の温度は変わるものだって気付きもせずに

森のような公園に差し掛かった所で
君は運転手に言って車を停めた

「どうしたんだ?」って言うほろ酔いの僕に
君は人魚姫の真珠のような涙を一粒くれた

それは悲しいくらい美しくて
儚いくらい一瞬で泡沫のように弾けて消えた

車を降りた君は振り返ると僕に向かって言った

「パーティは終わったわ」



男も女も魔法が好きで
愛も夢も何でも叶えられると信じている

明けない夜の魔法が解けたら
その時、やっと気が付くんだろう

パーティは終わったよ



運命とか

未来のことは
神様なら判っているのかも知れないけど
神様は
そんなにお人好しじゃないから
決して教えてはくれないだろうね。


って言うか

そのシナリオを書いているのが
そもそも神様なんだろうから
間違っても自分からネタバレはしないよね。

従って
人間には一秒後のことも判らない。

他人のことはもちろん自分のことだってね。

確かに予測は出来るだろうけど
それが本当に正しいかどうかは
まさに<God only knows>だ。


だけど
それで良いんだ。


良く<運命>とかいうけど
運命は未来を指す言葉じゃない。

過去を振り返った時に
「あー、あの時が運命の瞬間だったんだ」
そう<自分を納得させる>為のもの。


<今>だってそう。

「あー、これが運命なんだ」
そういって
自分を納得させられたら
人間は前を向いて行ける。

でも、その時

「こんな運命なんて嫌だ!」
なんて思ったとしたら
そこから先へは進めない。

かといって
今更、過去に戻れるはずもないし。

それじゃ<運命>を恨む?
恨んで、それからどうする?

ずっとそこで立ち止まっているのかい?


それでも時間はどんどん過ぎてしまう。

何かをしても何もしなくても
どうせ過ぎてしまう時間なら
足掻いてみたら良い。

みっともなくたってかまうもんか。
諦めてしまうよりはずっと良い。

自分をごまかしてまで
運命なんて受け入れなくて良いよ。

だって、言ったろ?

<運命>は未来のことじゃないって。
ましてや運命は
自分を縛り付けるものでもない。


今、僕たちが考えるべきことは
過去のことではなくて未来のこと。

例え
今がどんなに辛くても切なくても悲しくてもね。


悲しいことは一秒でも遅れるように祈りながら
かと言って
そのことばかりを気に病み過ぎることもなく
今、出来ること
これからやりたいこと
やらなきゃならないことを頑張っていくしかない。

輝ける未来が
いつか<運命>だったと言えるようにね。




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