Neko

夢の汽車に乗って ショートストーリー

プロフィール

yumenokisya

Author:yumenokisya
現住所 北海道十勝国

 好きな言葉は
『なんとかなるべさ』

 そう、生きてさえいれば
何とかなるもんです。。。
   


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Daydream

雨上がりの空に大きな虹がかかっていた




ねぇ?
”虹のふもと”って見た事ある?



「えー? 無いわ。 あるの?」



あるよ



「何処で?」



あれは・・・そうだなぁ・・・
もう25年くらい前になるかな
仕事で走ってる時にね

何処でだと思う?



「何処? 分からないわ
  街じゃ”ふもと”は見えないわよね?
  川とか湖・・とか?」



いや、田んぼなんだ
田んぼから大きな虹が生えてたんだ



「田んぼ? 生えてた?
  面白い言い方ね」



うん、大きな虹だったなぁ〜

そう、まさに”生えてた”って言葉がピッタリでさ
『あっ! あそこがふもとだ!』ってね

で、追い掛けたんだ
すぐ、そこに見えたんだ



「それで?」



うん、その田んぼに行ったんだけど
いや、着いたはずだったんだけど・・・



「見れなかった・・・?」



そう・・・

俺、ホントに虹を見たのかな?
あれは”虹のふもと”だったのかな?
夢だったとかさ



「ううん、見たのよ。 あなたは確かに」



そうなのかなぁ〜



「そうよ。だって、あの頃のあなたは一所懸命に走っていたわ
  夢に向かってね」



夢か・・・
今はどうなんだろう?

いや、訊くまでもないのは分かっている


そうだな・・・いつからだったろう
現実に追われてばかりで
いつの間にか夢を追う事も忘れていた気がする

大人になるって、そう言う事だと
自分に言い聞かせてさ

いや、自分への言い訳かな・・・都合の良いね
諦める”口実”が欲しかっただけだったんだろうな


ねぇ?
まだやり直せるかな?



「あなたのココロに訊いてみれば?」



俺の・・ココロ・・・?

そうだな
それは俺が決める事だよね?


あっ、ところでキミは誰なの?





懐かしい匂いがフッと頬をかすめた気がした

そしてそれは
ひとひらの風になって空を昇り
虹を駆け上がっていったように見えた


その大きな虹は少しづつ色を薄くしていって
やがて、空の青に溶けていった





星合

“例え1年に1度だけでも会えるなら幸せ
 織姫と彦星には
 今年も来年も10年後(あと)も有る
 けれど私達には渡る天の川さえ今は無いの・・・

 せめてもう一度
 あの人に会わせてください

 叶わない願いなら
 この身を奪って !
 心だけの私になって
 あなたを探しに行くわ・・・“




七夕で賑わう商店街
行き交う人の笑顔の群れが由美には辛い

「どうしてみんなは、
  そんなに笑えるんだろう・・・」

まだ、ホンの半年前の出来事
あの日以来、由美から笑顔が消えた
何もかもが虚しくて、何もかもが哀しい

「私も一緒に死んでいたら
  どんなに楽だっただろう」

由美の誕生日の夜、
2人でお祝いをした後の由美を送る帰り道
はみ出して来た対向車との事故で武は死んだ
あっけないくらいの最後

即死だった・・・


思い出すと今でも涙が溢れてくる
どれだけ涙を流したか・・・
それでも涙は枯れる事は無い

由美は街の喧騒から逃げ出すように足を早めた

1人でいる寂しさ
でも、
それより人波の中にいる孤独感の方が
今の由美には辛かった



商店街を抜けて外れに来た時
ぼんやりと薄灯りの中に
1本の七夕飾りが立っていた
誰にも気づかれないように、
あまりにひっそりと立っていたその飾りは
何か場違いな感じすらした

良く見てみると、
飾りの下に小さな看板が有った

  《星合の飾り》

「星合の飾り・・・?」

見ると、
下げてある短冊はどれも普通の短冊では無かった

ハンカチだったり、
おみくじを木に結ぶように
便箋を枝に結んでいるのも有った
どれも、
良く読めないくらい文字がにじんでいる気がした
多分、昨夕の雨にでも濡れたのだろうか

由美は不思議な気分でそれを見ていた

飾って有った短冊・・・
いや、短冊の代わりに結んであるのは
どれもおかしなものばかりだったが
今の由美には何故か違和感は感じられなかった

むしろ、
下げた人の想いが伝わってくるような気がして
胸が締め付けられるようだった

「星合の飾り・・・何処かで・・・?
 そうだ、思い出した!
 確か・・・七夕の夜、亡くなった人に所縁のある物に
 想いを書いて枝に飾ると、その想いは星を渡って
 亡くなった人に届く・・・」




「あのネクタイ・・・」

ふと、上の方に目をやると、
1本のネクタイがやはり枝に結んで有った

「これって…まさか!」

由美は慌てて、そのネクタイを枝から外すと、
そこに書いてある文字に釘付けになった

“もう一度だけ、
  もう一度だけで良いから由美に会いたい”

「武の字だ!」

そのネクタイは
去年の武の誕生日に贈ったものだった
見間違えるはずもない

「間違いない! でも、どうして?」


その瞬間、由美は全てを思い出した

「私だ・・・
  武じゃない・・・死んだのは私・・・」



通夜の夜、
棺の前で人目をはばからず泣き続けていた武を
由美は少し高い所から見ていた

「違うわ! 武、私はここにいるのよ!」

それから何度も武の傍で武に話しかけた
必死になって・・・

でも武には由美の声は届かなかった

それが辛くて、
いつしか
由美は自分の記憶を心の奥深くに封じ込めたのだった
あの事故の記憶を・・・



由美はハンドバッグからハンカチを取り出すと
紅いルージュで
武への想いを1文字1文字丁寧に書き綴った
そして、
ネクタイとハンカチを外れないように
シッカリと結ぶと愛おしむように抱き締めた

「武・・・愛してるわ。 
  例え、会えなくても心はいつも一緒よ」

そして、
ハンカチを結わえたネクタイを元の枝に結んだ


その瞬間、
由美は自分の身体がフッと軽くなるのを感じた

目の前に会った星合の飾りが
段々と目の下になっていった
それが見えなくなるくらい小さくなった時
ふと1軒のアパートの部屋の灯りが見えた

「武・・・」

思う間もなく、それは更に小さくなっていった
やがて、
空の星が眩しいくらいに感じるようになった時
何処からともなく声が聴こえた

『どの星が良い?』

「星・・・? もし、星になれるなら、
  武の部屋が一番良く見える星が良いわ・・・」



部屋には
2人で仲良く肩を抱き合った写真が今も壁に貼ってある

武はアパートの部屋で
今夜も由美にメールを送っていた
寂しい時、由美を思い出した時
武はいつも返事の来るはずのないメールを送っていた

返事は来ない

でも、
携帯に残された由美のアドレスだけが
由美と繋がっていた唯一の証しのように思えた


その時、武の携帯の着信ランプが光った

「由美? まさか・・・」

武は慌てて携帯を開いたが、
メールが入っているはずもなかった


ふと、武は窓の外を見た

都会の夜には珍しく、
ひと際輝いている星が見えた

「そっか、
あの星の輝きが携帯の画面に映ったんだ・・・」

武は窓を開けると、その星を見上げた

それは、
なんだかとても懐かしい暖かな輝きに思えた

北海道では8月7日が1か月遅れの七夕です

帯広の中心部のアーケード商店街では
七夕祭りが始まりました

tanabata-3.jpg tanabata-4.jpg


と、言う事とは関係あるのか無いのか・・・
それはともかく(笑)

今夜と明晩は2夜連続で
七夕をモチーフにしたショートストーリーを
掲載しようと思います

まず、1日目の物語は
昨年、旧ブログに掲載したものです
(少しだけ手を加えましたが)

なので、
「去年読んだよ」
と言う人はここを飛ばして
次の「ダヤンを探せ!?(仮題)」をご覧くださいませ

(なんて親切な私? ←自分で言うなよ(^-^;  )

ちなみに、明日の掲載分は
今夜とはガラッと雰囲気の変わった
新作の予定です



それでは、始まり、始まり・・・・



『星に願いを 〜アンチテーゼな夜に〜』


昔々の話・・・



ある所に
誰もが呆れる程、強欲な爺さんと
誰もが呆れる程、欲の無いお爺さんが住んでいた


七夕の日
強欲爺さんは朝から庭の大きな柳を見て考えていた

「今まで何十年も願いを叶えてもらえなんだ。
 今年こそは何が何でも叶えてもらわねば」

強欲爺さんは次々と
思いつくまま短冊に願いを書いた

書いては短冊を次々と柳の枝に結び、
陽が落ちる頃には
とうとう3mもあろうかと言う柳の枝は
短冊で見えなくなった



欲の無いお爺さんは一番星を見ながら
「今年も綺麗な天の川が見えそうじゃ」
と微笑んだ

結局、
庭の大きな柳の枝には何も短冊を下げなかった



その夜

神様は村人が書いた沢山の短冊を前に
「今年はどの願いを叶えてやろうか…どれどれ」

一枚、一枚丁寧に短冊に書かれた願い事を読み始めた


「どれ、これは村一番の正直者の与平だな。
 何々? そろそろ嫁が欲しいか。よし叶えてやろう。
 次は、村一番の親孝行なお花か
 願いは・・・?
 ほぅ『お母さんの病気が早く治りますように』
 よし叶えてやろう。 次は・・・」

神様は次々と村人の願いを叶えていった


やがて夜半も過ぎた頃
「ふぅ〜さすがに疲れるわい。どれ、後は?」

見るとまだ数えきれない程の短冊が残っていた

「何とした事だ
 もう殆どの村人の願いは叶えたはずじゃが・・・」


良く見ると
残っていたのはどれも強欲爺さんの短冊ばかり
しかも半端な数ではない

「全く、何と強欲爺だ! 絶対叶えてやるものか!」


しかしそこは神様
万が一にも
他の村人の願いが混ざっているのではと思うと
手を抜く訳にもいかなかった

「やれやれ…」

そう呟くと、又一枚一枚丁寧に短冊を読んで行った

「一体何枚書いたんだ?
 これでは朝までには終わらないではないか。
 だが、絶対奴の願いなど叶えんぞ!」

さすがの神様も疲れも有ってか
少し投げやりになって言った



やがて東の空が薄っすらと白み始めた
「いかん、もう夜が明けるではないか!」

神様は焦っていた
だが短冊はまだ何百枚も残っていた

「分かった、分かった、わしの根負けじゃ。
 しょうがない、一つだけ願いを叶えて終わりじゃ」

神様は目を瞑ると一枚の短冊を取った



「次は? 確かもう一人・・」

だが何処を見ても短冊は残っていなかった

そうこうしている内に陽が昇り朝になった
結局、神様が自棄になって取った短冊の願いが叶って
強欲爺さんは大金持ちになった

一方、欲の無いお爺さんの願いは叶わなかった
いや、
初めから何も望んではいなかったのだが・・・




昔話やお伽噺であれば
強欲爺さんには罰が当って
正直な欲の無い爺さんには
幸せな結末が待っていると言うものだろう

しかし、現実はと言うと
世の中には得てして理不尽な事が多い

だが、
欲が無ければ叶わない事も確かに有るのだ



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