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夢の汽車に乗って
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プロフィール

yumenokisya

Author:yumenokisya
現住所 北海道十勝国

 好きな言葉は
『なんとかなるべさ』

 そう、生きてさえいれば
何とかなるもんです。。。
   


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負けた夜

”負けたくないと意地を張れば張るほど
 人は負けに又、一歩近づいていく”

  虚空の吟遊詩人 夢乃何チャラ語録より抜粋




「勝ちたい」と思う人
「負けたくない」と思う人

同じようにみえて
実はその差は大きい


「負けたくない」と思う人は
その相手に対して負けを意識しているのだ

だから「負けたくない」と思ってしまう


もちろん
普段の鍛錬は言うまでもないが
それだけで勝てるほど勝負事は甘くはない

時の運とか地の利をどう活かせるかとか
その全てを味方に付けなければならない

且つ

どれだけ相手より「勝ちたい」という気持ちが強いのかで
そのほとんどの勝負は決まるものなのだ


それに比べて
「負けたくない」と言うのは
言ってみればただの意地だ




と、冷静に考えれば簡単に解ることでも
いざ自分がその段になると
案外、自分を見失ってしまうものだ

その愚かさ、危うさが
人間の人間たる証拠なのかも知れないが




「負けるもんか! まだまだ負けたくない!」

そう思って何とか十月を乗り切った

だが、どうだ?

時が十一月を告げた途端に
心に張り詰めていた糸が切れたかのように
私は負けを認めることになった



あれは、そう・・・
十一月も二週目に入った或る日のことだった


北海道では紅葉の季節も
そろそろ終盤に入ろうかという頃

風の向きが今までとは明らかに違ってきていた
しかも冷たい風は私にこう言った

「そろそろコートでも着たいんじゃないのか?
 寒いんだろ? 痩せ我慢なんかするなよ。
 痩せては見えないけど」←放っとけ!



確かに北海道人なら
本能的に既に冬の気配すら感じ取っている時節

それが証拠に

最低気温も
何処そこでは今朝は氷点下になったなんてことが
テレビのニュースでも流れるようになっていた


「今まで何とか頑張ってきたけど
 もう良いかな?
 もう負けても良いよね?
 みんな笑って許してくれるよね?」


そう自分に言い訊かせながら
あの日、あの夜、私はストーブのスイッチを点けた


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まぁまぁ

「玉虫色」なんて言葉がありますが
敢えて物事をハッキリさせないのが
古来、日本人的な美徳なんだそうです。

考え方が欧米化されてきた現代に於いては
その評価は昔とは随分と変わってもきているんでしょうが。



同じような言葉に「まぁまぁ」というのがあります。
他人からの問いに対して私も良く遣ったりしています。

「調子はどう?」「景気はどう?」
そう訊かれた時の模範解答みたいなものでしょうか。

今の仕事に対する問いであれば
仮に、本当に儲かっているとしても
「いやぁ~仕事はばっちり順調だし、儲かってしょうがないよ」
と、答えるのは何だかいやらしいし
何より相手に傲慢な感じを与えてしまいます。

逆に調子が悪い時に
「いやぁ~最近は全然ダメなんだよね」
なんて答えると
それが本当なら尚更
相手に余計な心配をかけることにもなってしまいそうで
それを良しとは出来ません。

仕事だけじゃなくて体調面への問いなら尚更です。

それに、心の何処かで
相手に弱い面を見せたくないという気持ちもあったりします。

男の見栄でしょうかね?
かもしれません。



良くも悪くも答えは「まぁまぁ」

つまり、曖昧にするのは或る種の相手への思いやり?



一方でこんな「まぁまぁ」もあります。

怒っている人に対して宥める時の「まぁまぁ」


怒っている人の気持ちも分かるし
その相手方の言い分も判る時なんかそうですね。

なので、宥めてはいるんだけど
決して、どっちが良いとか悪いとかその辺はハッキリさせません。


「言いたいことがあるなら
 ハッキリ言わなきゃ相手だって判らないよ」

まぁ、確かにその通りなんですけどね。

でも、何でも白黒をハッキリ付けなきゃダメですか?
立てずに済む角なら立てずにおきましょうよ。

間に入る人間は何とか円く収めようとします。

そんな役目の人もいますよね。



相手の問いに対して
「まぁまぁ」と答えている自分を思い起こします。

きっと一割か二割は確かにその通りなんでしょう。
しかし、そのほとんどは
実は自分自身に対して答えているような気がします。

良い時には敢えて自分自身が調子に乗りすぎないように。
悪い時なら「決して悪くはないんだ」と自分に言い聞かせるように。

上り詰めたら後は落ちるだけとか
底まで落ちたら後は上がるだけだよとかって
自分を戒めたり自分を慰めたりとかね。


良いも悪いもほどほどが良い。
だから何でも「まぁまぁ」ってことにして取り繕う。

もちろん賛否は多々あるでしょうが
そこはね「まぁまぁ」ってことで、ひとつ。


晩秋

舗道に散りばめられた黄が
昨日よりも色褪せて見えた気がしました

DSC_0765-330.jpg

ここに留まりたい秋と
来るべく様子を伺う冬の静かな攻防も

こうして少しづつ決着がついていくんですね



幸せとは

時間という現実は残酷ですよね。

何がといって
多分、多くのみなさんが挙げるのは
<時間は決して戻らない>と、いうことでしょう。

人生は幾つになってもやり直しが出来るとはいうけど
過去に戻ってやり直しが出来る訳ではありません。

気が付いた<その瞬間>から
確かにやり直すことは出来ますが
それは、そこからの修正にすぎなくて
過ぎた時間が戻ることはやはりありません。



時間が経つと人間は誰しも老いていきます。


老いは
人間からひとつ、ひとつと出来る事を奪っていきます。


時には人間から考える力さえも奪ってしまいます。

もちろん
どんなに健脚を誇った体力だろうと
どんな美貌でさえも<時間>の前では無力です。

そこに例外はありません。

昔から各国各地に不死鳥伝説がありましたが

時の権力者達がこぞって
不老不死を追い求めた気持ちも
歳を重ねてきた今なら少しは解るような気がします。



ただ、それが本当の幸せなのかは判りません。


もし、自分一人だけが不老不死を手に入れられたら?

幸せだと喜べるのは
おそらくは最初の数年間だけでしょう。

いや、最初の数ヶ月、
もしかしたらただの数週間だけかもしれません。

その後に待っているのは恐ろしいまでの孤独かもしれません。

愛する人が出来る度に
その愛する人の死をただ見ているしか出来ないとしたら?

それを何度も繰り返さなければならないとしたら?

それが何百年も続いたとしたら?

きっと、耐えられませんよね。



そう色々なことを考えていくと
時間が過ぎて行くのは決して残酷なことではない。

そう思えてきたりもします。

望まない瞬間で時間が止まったままだったり
或いは、止まって戻ってはを悪戯に繰り返すことの方が残酷です。

それじゃ、上手い具合に
幸せな瞬間で時間が止まったり
幸せな時間だけを繰り返してくれるなら?

でも、それもやはり幸せとは呼べないでしょう。

人間にもし、<慣れ>という感覚がなければ
永遠の幸せと呼べるのかもしれませんが
残念ながら人間はそういう風には作られてはいないのです。

幸せな時間はやがて
ただ褪せていくのを待つようになっていくでしょう。


浦島太郎の玉手箱の教訓は

乙姫の言いつけを守らなかったことへの戒めなんでしょうか?


それとも
怠惰に過ごした時間への戒めだったのでしょうか?

でも、私は思いたいのです。

地上に戻った浦島太郎が
普通の<人間>に戻れるようにとの乙姫の優しさだったのだと。



時間。

つまりそれは
人間が人間である為に受け入れざるを得ないもの。

過ぎて行く時間はむしろ<生>そのもので
その中に幸せも不幸もあるのだとしたら
それは決して残酷なだけではなくて
例えば、成長も老いも人間が人間である証に過ぎないのです。

受け入れざるを得ないものを受け入れる。
そのことを素直に受け入れられる人が幸せな人。

そう言えるのかもしれません。


似てる

もしかして
寂しさと片想いって似てるのかもね


「どう言うことだい?」


だってさ
切ない想いをするのはいつも自分だけだし
そして
いつかは誰かに自分を解って欲しいって願ってる


「なるほど。
 その意味では確かに似ているかも知れないね。
 そして、どっちも自分の側の問題だしね」


そうなんだ
そこから一歩を踏み出さないと
どちらも解決しない

自分独りで悶々としているだけじゃね

もっとも、片想いって必ずしも寂しいだけじゃないけどね
相手のことを想っている時間が幸せだったりするしさ

でも、誰かに気付いて欲しいと願っているということでは
やっぱ、似ているんだよね きっと


「そうだね。
 そっか、その理屈だと
 優しさとワガママも似ているのかもよ。
 だって、それって自分じゃ案外気がついていないものだよ。
 相手がそう感じているだけで
 自分がそう思っている訳じゃないもの」


うん、そうかも知れない

優しさにしろ、ワガママにしろ
知らないうちに相手に自分を押し付けているなんてさ

もしかしたらそんなこともあるんだろうな


「難しいところだけどね。
 でも、相手があることだけに
 その判断は相手に委ねなきゃならない」


そうすると
もしかしてだけどね

正直者と嘘つきも似ているってことになるよね


「正直者と嘘つき?」


うん、相手に正直に言った言葉が
望まないにしろ
相手を傷つけてしまうことってあるよね

そして
相手のことを思ってつく嘘もあるし

ほら、嘘も方便ってね

つまり
正直者がいつも正しいとは限らないし
嘘つきがいつも悪者だとは限らないってことでしょ?


「なるほどね。
 一見、対極にいる人が実は同じだったりする訳だ」


そう
対人関係ってさ
相手によって変わるものだからね

自分の態度とか行動って
相手によって変わるでしょ?

最初は皆に同じように接しようと思っていても
相手のリアクションや
自分に対する態度でだんだん自分も変わったりしちゃうよね


「そうだね。
 そうしなきゃやってられないからなぁ~
 誰もが聖人君子って訳じゃないしね」


うん、相手によって関わり方も違ってくる

それは仕方のないことだよ


「かもね。
 で、どうした?
 急にそんなことを言い出して。
 何かあったのかい?」


そう言う訳じゃないけどね

ただ、似てるなぁ~って思ってさ
君と僕がね


「お前と?」


うん、過去の君と未来の僕

過去はもう変えられないでしょ?

未来はもしかしたら変えられるかも知れないけど
どのみち、選ぶ道はひとつだとしたら
それは変えられないのと同じだよ


「いや、それは違うな」


違うって?

どうしてだい?


「お前は過去は変えられないと言った。
 うん、確かにそれはそうだ。
 だけど、未来はお前が選ぶことが出来るだろ?
 選べる道はたったひとつかも知れないけど
 その選び方で未来は変わるはずさ。
 違うかい?」


それはそうだけど・・・

でも、どんな選択をしたって
それがどんな結果になっても
やり直すことは出来ないよね?

それは過去が変えられないというのと
同じ意味なんじゃないかな


「いいや、全く違うよ」


違う?


「あぁ、違う。
 過去の俺がいるから今のお前がいて
 そして、未来のお前がいる。
 つまり、それだけ経験をしているってことさ。
 何もいきなり
 生まれたてのお前が選択をする訳じゃない。
 過去の俺を信じろよ。
 そしたら、ちゃんとした選択が出来るはずさ」


そっか・・・そうだね

僕と君は似ていて当たり前だけど
だからって
同じでいる必要はないんだものね

君がした後悔を僕は知っている
だから
後悔しない方法も分かっている

それだけでも随分違うよね


「あぁ、そうさ。
 俺はお前を
 後ろからただ見ているしか出来ないけど
 お前はもっと前を向いて行動が出来る。
 それが俺とお前の違いだよ。
 俺からしたら羨ましいよ。
 だから俺も分も頑張ってくれよな。
 頼むぜ、相棒!」


あぁ、解った
頑張るよ

君と一緒にね


「人は運命を避けようとして選んだ道でしばしば運命に出会う」

確か、こんな言葉がありました


結局は
運命とは一度そうと決められたら諍えないものなのでしょうか?

それとも
事の結果を運命と呼ぶことで
私達は自分自身を慰め、或いは正当化しているだけなのでしょうか?




追い風と向かい風

人生に於いて多いのは果たしてどっちなんでしょう?


正直に言えば
私が願っていたのはいつも追い風か
そうでないならせめての無風だったのですが
そうは都合良く行かないのが人生というものです

はい、身を以て経験してきましたよ(笑)


そしてまた

振り返った時に強く印象に残っているのは
やはり追い風よりも向かい風だったように思えます

よく

「若いときの苦労は買ってでもしろ」

なんて言いますが
買ってまで苦労なんかはしたくはないものです

避けられるものなら避けたい
背を向けられるものなら背を向けたい

若い頃なんかは特にそんな思いばかりでした

いや

それは今もあまり変わってはいないのかな?

プチ反省・・・って反省してない?(笑)




風見鶏にもし

「お前は風を読んでいるのかい?
 それとも、ただ風に吹かれるがままなのかい?」

そう訊いたなら
風見鶏は何て答えるのでしょう?


どう答えてくれるのかは判りませんが
ただひとつ言えるのは

風見鶏は
それがどんなに強い風だとしても
決して風に背を向けてはいないということです


風見鶏はいつも風に向かっています


風見鶏は知っているのでしょう

向かい風は正面から受けることで
どんなに強くてもその風圧に耐えることができる

しかし

一瞬でも横を向いたり背を向けた瞬間
風に吹き飛ばされてしまう

そんなことを


そしてまた
風見鶏はそんな生き方を運命だなんて思ったこともないんでしょう

きっと・・・ね


秋の理由

「秋の理由?
 そんなものはないさ。
 ただ、夏が終わったから秋になっただけだろ?」

そうかな?

「そうさ。それが季節。つまり自然の摂理ってやつさ」

じゃあ、どうして秋はあるんだ?
夏の次は秋って誰が決めたと思う?

「さぁな。なんだよ?
 神様だって言わせたいのかい?」

いや、そんなつもりはないよ。
第一、なんでも神様にしたら話は続かないじゃん?

「そりゃそうだ。
 じゃ、なんでだ?」

クロソイド曲線みたいなものなんじゃない?

「なんだそれ?」

いわゆる緩和曲線ってやつでさ。
道路の設計なんかで良く使われるんだけどね。
直線と円弧を直接接続させると
直線からカーブに入る時に曲率半径の不連続性から
急なハンドル操作とかをしなくちゃならなくなって
運転しづらいから接続部分に緩和曲線を当てて
スムーズにカーブに曲がれるようにするんだよ。
その緩和曲線がクロソイド曲線なんだけど
つまり秋も緩和季節ってやつなんだろうなってね。

「なるほど。
 難しいことはともかく。
 ようは暑い夏からいきなり冬になると
 人間の身体がもたないから
 間に秋を入ることで少しづつ身体を慣らしていける。
 そういうことだろ?」

そう。
春も秋もその意味では夏や冬以上に
人間にとっては重要な季節ってわけ。

「だけどさ。
 それだけの為に秋があるんだとしたら秋は可哀想だな」

可哀想? どうして?
重要な役目を果たしているんじゃない?

「確かに、お前の言う通りなんだと思うよ。
 それが人間の為なのか
 はたまた、自然界全体を守る為なのか?
 それは判らないけどね」

うん。

「でも、本当にそれだけなのかな?」

と、言うと?

「秋のイメージってなんだい?」

ん~ 物憂げな季節?
誰もが感傷的になる季節?
秋の夕暮れとか夜が長いこととかさ。
日が暮れるのが早くなると
『あー、もう一日が終わるんだな』とか
何か寂しい気持ちになるし
夜が長いと何でか余計なことを考えすぎたりとかね。
良く、秋は誰もが詩人になるなんて言うけど
それは判る気がするよね。

「そうだな。
 でも、それは秋だからかな?」

そうなんじゃないの?
何だい?
秋に理由は無いって言ったのは君だぜ。
夏が終わったから秋が来た。
それが自然の摂理なんだろ?

「そう、自然の摂理さ。
 じゃ、自然の摂理って何だい?」

それは、つまり・・・
自然界を支配している法則?
自然に派生される万物に適用される法則?
宗教的な概念で言うなら
『すべては神の配慮によって起こっている』
なんか、そんなのを昔、何かで読んだよ。

「じゃ、やっぱり秋も神の配慮によって
 夏と冬の間に置かれているのかな?」

いや、それこそ味気ない結論じゃないか?

「そうだね。俺もそう思うよ」

じゃ、何て言えば良いんだい?

「だから、秋に理由なんか無いんだよ。
 理由を付けているのは人間だけさ。
 いや、秋を楽しんでいると言った方が良いかな」

何だか、判ったような判らんような感じだね。

「例えばさ、広い世界の中にゃ常夏の国なんてのもあるだろ?
 もし、冬が無い国の人に『秋はどうですか?』って訊いたって
 『???』ってなもんだと思うよ。
 多少の気温の上がり下がりはあるにしても
 そもそも季節って概念があるかどうか判らないよ」

まぁ、そうかもしれないね。

「ところが我々には季節がある。
 だからこそ、季節それぞれに理由を付けて楽しむことも出来るんだ。
 特に冬なんかは何か理由でも付けないとやってらんないしね」

でも、それが理由だなんて、そんなんで良いのかい?

「そんなもんだよ、真実なんてさ。
 何をどうしたって夏が終わったら秋が来るんだ。
 しかも、秋の後に控えているのは厳しい冬だ。
 なら、夏に火照った頭を冷やして
 深呼吸じゃないけど、ちょっと落ち着いてみるのさ。
 落ち着いて周りを見渡したら
 夏とは又違った風景だって見えてくるだろうし。
 振り返ったり立ち止まったりしてさ。
 そんな風にして時を楽しむんだよ。
 秋のおかげで束の間かもしれないけど
 冬までの時間稼ぎだってできるだろ?」

つまり時間稼ぎに理由はいらないと?

「そう。理由はいらないけど
 秋を楽しむためにあえてそこに理由を付けるのさ。
 詩人になったり芸術家になったり
 物思いに耽ったり、小説を読んだり歌を聴いたりね。
 普段と違う自分を装ってさ。
 でも、それってテレくさいだろ?
 で、『秋だから』って秋のせいにしてテレ隠しをするのさ」

テレ? それは君だけだろ?

「あはは、そうかもしれないね。
 でも、たまには
 そんな自分に酔ってみるのも良いんじゃない?
 秋なんだから。
 おや? 何だい? もしかして呆れてる?」

呆れてるって・・・秋だけにってかい?
いやでもそれさ、オチにしない方が良いと思うよ。
寒くって早く冬になっちゃいそうだから。



と、まぁ~
禅問答よろしくとめどなく二人の話は続くわけですが
理由が有ろうと無かろうとそれでも秋は秋。

季節に名前を付けたのが誰かは判りませんが
それぞれの境目をきちっと決めなかったのは逆に良かったですね。

その曖昧さが季節の機微、風情というものです。
日本人的にもですが
それが何か人間らしくて良いなぁ~
なんてね、思う訳です。

そういや、この週末
近所を散歩していたら『雪虫』が飛んでいるのを見ました。

『雪虫』と言っても
北海道以外の人には何処まで通じるのかは判りませんが
北海道では晩秋になると見かけるようになります。
なので『冬の使者』とか
『初雪を知らせる虫』なんて言われていたりするんですけどね。

雪虫が飛び始めると、もうすぐそこまで冬は来ているそうです。

そっか、そうなんだぁ~

出来るならせめてもう少しだけ、いやもっと出来るだけ長く?
秋を楽しんでいたいんですけどね。←北国人の切実な本音


五十を過ぎて尚、天命を知るでもなく
未だ、心はいつも惑うばかりで
耳順うべき歳を経ても尚、自分の何たるかさえ知らず

それでもただ月日は流れ行き
願うと願わざるとに関わらず歳だけは重ね行く

嗚呼、人生の虚しさよ

せめて君が永劫ではないことが救いになろうとは


と、まぁ

難しくっぽく書いてはみたけれど
とどのつまりは
言うほどの人生を送れていないということを
それらしく並べただけで
まさにそれこそが私の過ごしてきた人生を
ものの見事に言い表しているんだろうと
ふと、思ったりしてみるのです

でも多分、それが現実(笑)


昔からテレビで観ていた大御所と言われる俳優さんとか
さも、自分こそが
国を動かしているんだとばかりに偉ぶっている大臣が
実は私より年下なんだということが判った瞬間

愕然とすると同時に
それぞれが過ごしてきた時間の違い
スタートの違いはもちろんあったにせよ
その違いの本質とはいったい何だったのだろうか?

などと、つい自問をしてしまいます


もちろん、過ごしてきた日々には喜びもありました

喜怒哀楽は同じくらいの頻度であって
でも、その感じた時間の長さは
きっと、それぞれ違ってはいたけれど
忘れられないという意味ではどれも大切な想い出です

どれを欠いてもそれは嘘になるのですから


実際のところ自覚か自虐かは判らないけれど
年に一度くらいは
そんなことを考えてみる日があっても良いかな

と、今日はそんな日


契約

糸よりも細い新月の夜は闇の深さがいっそう深いようにも見えた。

「何だか不気味な夜だな」

いつも通っていて見慣れているはずの辺りを見回しながら俺は呟いた。

霊感があるとか、別にそんなことは今までも一度も無かった。
周りの景色だって特にいつもと何かが違うという訳でもなかった。
にもかかわらず、その夜は何故か自然と帰宅をする道も足早になっていた。

いつも近道にしている薄暗い公園の道を抜けようとしていたその時だった。
黒ずくめの衣装を身にまとった男が突然、俺の目の前に現れたと思ったら
近づいて来るなり俺の顔を下から覗き込むようにして、そしてこう言った。

「お前さん、ずいぶんと後悔を背負い込んでいるって顔をしてるね」

見知らぬ男のいきなりの言葉にカチンときた俺は無愛想に答えた。

「はん、何をバカな! お前に心配をしてもらうことなんか何もないさ」

「なら、良いけどね。でも、ほらっ、顔にちゃんと書いてあるぜ。
 『私は今まで何度も何度も後悔をしてきました』ってな」

「ふん、お前に何が判るって言うんだ?
 えー? いったい俺の何を知ってるって?」

すると男は嘲るように呟いた。

「知ってるさ。お前の何もかもだ。
 お前がこれまでしてきた後悔の全てもね」

「どうだかね。第一、俺にはそんな言うほどの後悔なんてしてない」

「ほぉ、そうか。それじゃあ、これは他の奴のことだったかな」

男は古ぼけた手帳のような物をパラパラとめくりながら
さも、意地悪く独り言のように呟いた。

「どれどれ・・・大学受験の時?
 親にずいぶんと心配をかけたんだねぇ~
 受験に失敗をして家出をしたのかい?
 自分が勉強しなかったのを親のせいにしちゃって、まぁ~
 で、やっと入った三流大学じゃ仕送りをもらって放蕩三昧かい?
 それから・・・うん、二十七歳の時に別れた女のことを?
 ほぉ、今でも忘れられないでいる・・・
 もう三十年も経ってるのに?
 だって、お前は結婚もしていて今じゃ孫までいるってのにかい?
 忘れられないのに何で結婚なんてしたんだい?
 忘れる為かい? それとも自棄になっちまったって訳かい?
 いやいや、までも、一途もここまでくりゃ笑い話だね、全く。
 なぁ、そう思わないかい?
 お前のことじゃないってなら言うけど、こいつ笑えるだろ?
 それから? ふむ、なになに? 亡くなった母親に対して・・・
 ん、こりゃ笑えないかね。バカな奴だぜ、全くな。
 親孝行、したい時に・・・まだ、お袋さん元気・・・」

次の言葉を遮るように俺は叫んだ。

「止めろ! 止めてくれ・・・判った、もう判ったから・・・
 いったい、お前は何者なんだ?」

「俺か? 俺はお前の友達みたいなもんだよ」

「何処がだよ? 俺にはお前みたいな友達はいない」

「だから、<みたいなもん>って言ってるだろ?
 友達で悪けりゃ、お前の分身だとでも言っておこうか?」

「意味が判らない! 何だ? いきなり俺の前に現れて。
 俺の粗探しかよ? いったい何が目的なんだ?」

「目的なんかないさ。言ったろ? 俺はお前の分身だってね」

「・・・」

「おいおい、そんな渋い顔をするなよ。仲良くやろうぜ」

「何が目的だ?」

男は俺の目を真っ直ぐに見ると言った。

「お前の願いを叶えてやろう」

「願い? どういうことだ?」

「お前の願いを叶えてやる。それだけのことだよ」

「ふん、やっぱりお前は相手を間違ってる。
 どうせ、新手の新興宗教とかそんな類いだろ?
 残念だったな。俺はお前の金づるになるほど金なんか持っちゃいないさ。
 どうせ、さっきの話だって、おおかた興信所か何かで調べたんだろ?
 悪いな。かかった経費も回収出来ないでさ。
 フン、カモなら他で探すことだ」

俺は吐き捨てるかのように呟いた。

「ハッハッハ。面白いことを言う奴だな。
 誰が金を取るって言った?」

「じゃ、何が狙いだ?」

俺は思わず男に詰め寄った。
男はヤレヤレといった仕草を見せると言い聞かせるように俺に言った。

「おいおい、ずいぶんな言いぐさだな。
 狙いなんかないさ。
 なぁ~に、簡単な話さ。
 今のお前の全てと引き替えに
 お前が一番戻りたい時に一度だけ戻してやる。
 そしたら、お前はその時にした選択を代えれば良い。
 後悔をしたなら、そうならない選択をし直せば良いって訳さ。
 お前は人生をやり直すことが出来るんだ。
 どうだい? 良い話だろ?
 今のお前の全てを失ったとしてもお前は人生の選択をやり直すんだ。
 後悔をした選択はもう二度としないだろ?
 お前は改めて新しい人生を生きるんだ。
 今のお前の全てが無くなったところで
 違う人生を歩んでいるお前には何も影響は無いって寸法さ」

「そんなことが出来る訳がないだろ?」

俺は憮然と答えた。
すると男は笑みを浮かべながらこう言った。

「じゃ、試してみろよ」



「さぁ、いつに戻りたいだ? いつでも良いぜ。思いのままだ」

男は手帳をパラパラめくりながら訊いた。

俺は考えていた。

確かに、過去に後悔は何度もあった。
同じような後悔を繰り返してしまった時には
『なんて俺には学習能力がないんだろう?』
そう、自分を蔑んだこともあった。
過去に戻ってやり直したいと何度思ったことか。

でも、だからと言って現状を全て否定しようと思ったことは無かった。
確かに、過去には何度も後悔があったけど
結果、子供にも恵まれたし、今では可愛い孫だっている。
その全てを否定しようなんて気はそもそも無かったのだ。

ただ、その一方で歳を経て希薄になってしまった夫婦関係とか
仕事でも、ここ最近は上手くいかないことが続いたりと
そんなこともあって何処か投げやりな気持ちが増していたのも事実だった。

『過去になんか戻れる訳は無い』
そう思いながらも一方では
『もう一度人生をやり直せたなら俺はどんな人生を歩んでいたんだろう?』
それはきっと、誰しもが一度は思ったことがあるに違いない。
そして、俺は今夜この変な奴に出遭ってしまった。

『これは運命なのか? それとも、ただの夢か?
 そもそも本当に過去になんか戻れる訳がない。
 だけど、もし本当に戻れるなら・・・
 いつにする? 大学受験からやり直したいけど
 いや、違う・・・そうじゃない。
 やはり、あの時か・・・』

「決まったかい?」

俺を急かすかのように
男は右手に持った手帳を左手に何度も軽く叩き付けながら訊いた。

「あぁ、二十七歳の誕生日の一週間前に戻してくれ」

「ほぉ。やっぱりね。だと思ったよ」

全てを見透かされた気がして恥ずかしさから俺は度鳴るように言った。

「うるさい! 出来るなら早くやって見せろよ!」

「もちろんだ。お前さんも今度こそは後悔のない選択をしなよ。
 やり直せるのは一度っきりだからな。
 そうそう、それじゃ、約束通り今のお前の全てを頂くぜ」

「ふん、好きにしろ!」



長い夢から覚めた後のように身体には変な怠さというか疲れみたいなのが漂い
未だ何処か夢と現の境目にでもいるかのように心は重く垂れ込めた雲のようだった。

「今は・・・いったい、いつなんだ?
 俺は今、何処にいる? そして・・・何をしていたんだ?」

思い出そうとすると頭が割れるように痛んだ。
考えようとする度に動悸が激しくなって、まるで過呼吸みたいになっていた。

「考えてはいけない」

いつしか、俺はそう思うようになっていた。
或る種の自己防衛本能とでもいうのだろうか?

そして、俺は生きた。
ただ、生きたとしか言えないような月日だった。

それから、どのくらいの歳月が流れたのだろう?



糸よりも細い新月の夜は闇の深さがいっそう深いようにも見えた。

「何だか不気味な夜だな」

いつも通っていて見慣れているはずの辺りを見回しながら俺は呟いた。

霊感があるとか、別にそんなことは今までも一度も無かった。
周りの景色だって特にいつもと何かが違うという訳でもなかった。
にもかかわらず、その夜は何故か自然と帰宅をする道も足早になっていた。

いつも近道にしている薄暗い公園の道を抜けようとしていたその時だった。
黒ずくめの衣装を身にまとった男が突然、俺の目の前に現れたと思ったら
近づいて来るなり俺の顔を下から覗き込むようにして、そしてこう言った。

「お前さん、ずいぶんと後悔を背負い込んでいるって顔をしてるね」

見知らぬ男のいきなりの言葉にカチンときた俺は無愛想に答えた。

「はん、何をバカな! お前に心配をしてもらうことなんか何もないさ」

「なら、良いけどね。でも、ほらっ、顔にちゃんと書いてあるぜ。
 『私は今まで何度も何度も後悔をしてきました』ってな」

「ふん、お前に何が判るって言うんだ?
 えー? いったい俺の何を知ってるって?」

すると男は嘲るように呟いた。

「知ってるさ。お前の何もかもだ。
 お前がこれまでしてきた後悔の全てもね」

「どうだかね。第一、俺にはそんな言うほどの後悔なんてしてない」

「ほぉ、後悔したことすらスッカリ忘れているようだね。
 それにしてもバカな男だ。
 せっかく、望み通りの時に戻してやったのに
 結局は同じ人生の選択をして結局は同じ後悔をただ繰り返してきただけだなんてな。
 でもまぁ、無理もないか。お前は一度記憶を全て失っているんだからな。
 だけど、約束は約束だ。お前の全てをいただくぜ」



薄れ行く意識の中で俺は誰かの声を聞いた。

「哀れな、そして愚かな男よ。
 そうなったのも自業自得・・・とは言え
 私が収める世界に於いての奴らの勝手な所業を黙って見過ごす訳にもいかぬ。
 お前にもう一度だけチャンスをやろう。
 良いか? 奴の誘いを受けた時ひとつだけ条件を呑ませるのだ。
 『全てをお前に捧げるも今まで生きてきた記憶だけは渡せない』と。
 その条件が呑めないのなら話はもう終わりだと突っぱねるが良い。
 まぁ、あやつのことだ。あの手この手で誘惑をするだろうが、なぁに構わんさ。
 今の記憶を持ったまま昔に戻れるのなら決して同じ過ちは起こさないだろう。
 それこそがお前の望みのはずだ」



糸よりも細い新月の夜は闇の深さがいっそう深いようにも見えた。

「何だか不気味な夜だな」

いつも通っていて見慣れているはずの辺りを見回しながら俺は呟いた。

霊感があるとか、別にそんなことは今までも一度も無かった。
周りの景色だって特にいつもと何かが違うという訳でもなかった。
にもかかわらず、その夜は何故か自然と帰宅をする道も足早になっていた。

いつも近道にしている薄暗い公園の道を抜けようとしていたその時だった。
黒ずくめの衣装を身にまとった男が突然、俺の目の前に現れたと思ったら
近づいて来るなり俺の顔を下から覗き込むようにして、そしてこう言った。

「お前さん、ずいぶんと後悔を背負い込んでいるって顔をしてるね」

「あぁ、お前さんか? やっと遭えたよ。待ってたんだ」

「どういうことだ? お前は俺が現れるのを予言していたっていうのかい?」

「予言? さぁね。それはどうかは知らないが
 お前さんとは少なからず因縁があるみたいなんでね」

「なら、話は簡単だ。俺を待ってたんだろ?
 ってことは、お前さんは過去に戻りたいと思ってる。
 そういうことだろ?
 で? それはいつにだい? もう決めているんだろ?」

「あぁ、二十七歳の誕生日の一週間前に戻してくれ」

「ほぉ。やっぱりね。だと思ったよ。
 良いだろ。望み通り、今のお前の全てと引き替えに
 お前が一番戻りたい時に一度だけ戻してやる。
 そしたら、お前はその時にした選択を代えれば良い。
 後悔をしたなら、そうならない選択をし直せば良いって訳さ。
 お前は人生をやり直すことが出来るんだ。
 どうだい? 良い話だろ?
 今のお前の全てを失ったとしてもお前は人生の選択をやり直すんだ。
 後悔をした選択はもう二度としないだろ?
 お前は改めて新しい人生を生きるんだ。
 今のお前の全てが無くなったところで
 違う人生を歩んでいるお前には何も影響は無いって寸法さ」

「判った。だけど、こっちにもひとつ条件がある」

「条件? なんだ?」

「今の俺の全てをお前にくれてやる。
 しかし、俺が今まで生きてきた記憶だけは渡せない」

明らかに男の顔色が変わった。

「バカな。そんな約束は出来る訳がない!」

「なら、良いさ。話しは無しだ」

毅然と俺は答えた。

「待て! それはダメだ。望みを叶える見返りは対価交換と決まっている。
 お前を望み通りの過去に戻すには、それ相応の記憶との交換が必要なのだ」

「知ったことか! それは、お前の都合だろ? 俺には関係無いね」

そう言い放つと俺は男に背を向けて歩き出した。

「待て! 戻りたくはないのか?
 後悔をやり直したくはないのか?
 それが、お前の望みだったんじゃないのか?」

俺は振り返ると男に言った。

「戻りたいさ。出来るならね」

そう言った俺に取り繕うように男は駆け寄って来て囁くように言った。

「だろ? そうだ、それがお前の望みだものな。
 なら、話を続けようじゃないか? 人生をやり直し・・・」

男の言葉を遮って俺は答えた。

「俺の記憶なんかは消えてしまおうが、それはどうでも良いんだ。
 だけど、今更かもしれないけど
 その結果として可愛い孫の人生まで無かった事にはやっぱり出来ないよ。
 何回、人生をやり直したとしても、妻とのことがどうだったとしても
 今の孫に逢えない人生なんて、それに比べたらクソくらえだ」

同居をしている孫の笑顔を思い出しながら俺は思っていた。
『そうだ、久々にアイスクリームかケーキでも買って帰るか。
 まだ、起きいててくれたら良いけど』

「悪いな。そういうことだ・・・」

そう言いかけて気が付いた。
いつの間にか男は目の前から消えていたのだ。





「哀れな、そして愚かな男よ。
 あのまま私の言うことを聞いて人生をやり直しておれば
 今より遥に素晴らしい人生を送れたものを」

「所詮、人間なんてのはそんなちっぽけな生き物だってことだろ。
 僅かな幸せでも、それを失いたくないが為に無駄にあがいて
 結局は大きな幸せを掴むチャンスを失ってしまうんだ」

「なんだ、まだいたのか?」

「まだいたのかはひどい言い草だな」

「今回はもう少し骨のある男だと見込んでいたんだがな」

「せっかくこしらえたのに又、失敗作だったようだな。
 で? 今回は何万人こしらえたんだい? 何百万人かい?
 俺は何万人処分したら良い?」

「処分とは人聞きの悪いことを。浄化するのがお前の役目だろ?」

「ふん、同じことさ。奴ら人間にとったらね。
 あんたらが人間をこしらえる度に何割かの出来損ないが地球を滅ぼそうとしてきた。
 文明の名の下で人間どもは自分達では手に負えない狂気の産物を産み出し
 挙げ句の果てには自ら引き金を引き何度となく自然を破壊し尽くしそうとした。
 その度に俺達は大地震、大噴火、大洪水を起こして人間どもを選別し浄化してきた。
 正確に言うなら、あんたらの尻ぬぐいだがな。
 しかし、何千年もその繰り返しじゃないか。それに意味はあったのかい?
 いったい、いつになったらあんたらは完璧な人間をこしらえることが出来るんだい?」

「完璧な人間をこしらえるというのはそんな簡単なことではないのだ」

「だろうな。そもそも、あんたらだって完璧じゃないんだからな。
 なのにだ。愚かな人間どもはあんたらを神だと崇め、俺らを悪魔だと忌み嫌う。
 いくら、あんたらと交わした契約とはいえさ。全く割に合わない話しだぜ」

「それが仕事というものだろ?」

「仕事ね? あんたらがもっと上手くやってくれたら少しは俺らも楽なんだがね」

「何をぶつくさ言ってるんだかしらんが
 こっちには契約書があるんだ。違反したらお前は消滅するんだぞ」

「おー、怖い怖い。さすがに<神様>の言うことは迫力があるね。
 人間どものブラック企業のパワハラだって、もうちっとは優しいかもな」

「私だって十分に優しいさ。
 なんせ、契約書に書いてないことまで押しつけたりはしないからな。
 もっとも、そもそも契約とは我々が人間どもにした約束がその起源だ。
 だがそれは人間どもが希望を持てさえすればそれで良かったのだ。
 何、簡単に叶えられる約束なんぞするはずも無かろう。お前らにもな」

「えっ? 何か言ったかい?」

「いや、独り言だよ。独り言」


記憶 (改稿)

忘れていたことを
ふと何かの拍子に思い出すことがあります

そのキッカケは
ふと目にした一枚の写真だったり
ラジオから流れてきた歌だったり
テレビの中の何処か懐かしい風景だったり

それは様々だけど

時として
思い出が心の扉をこじ開けて
堰を切ったように突然甦ってくることがあります


忘れていたこと・・・

いや
忘れようとして心の中に封じ込めていたこと?



忘れようとする時
人は必ずそのことを
その人のことを思い出しているのです

だから忘れられない

忘れようとすればするほど
望むと望まざるとに関らず
脳はあらゆる限りに力を総動員して
記憶を鮮明なものにしようとします




評論家Aは言う

「忘れる為に遣う時間は
 いったいどれほど必要なんだろう?」

評論家Bは答えた

「いやいや
 人間なんて案外簡単に忘れてしまえる生き物さ」

評論家Aは反論する

「はたして君はそうかい?
 なら、君の頭の中には
 都合の良い記憶しか残っていない訳だね?
 それで幸せかい?」

評論家Bは少し考えて答えた

「悲しいことをいつまでも覚えていることの方が
 不幸なんじゃないか?」

評論家Aは言う

「確かに悲しかったことや辛かったことを
 いつまでも覚えていることが幸せとは思わないよ。
 でもね、簡単に忘れ去ることも幸せとは思えない。
 美しい思い出ばかりではないけど
 それでも、どんな悲しい思い出も辛い出来事も
 それも含めての今の自分なんだから」

評論家Bは答えた

「それじゃ、
 忘れる為の時間なんて必要ないじゃないか?」




確かにその通りだと思う

無理をして忘れる必要もないし
かと言って
いつまでもそれに縛られていることも
それは良いことだとは思えない

記憶は
時として後悔を過去から今に運び
時として過去を美化していきます

記憶とはそういうものです

そうであるなら

呵責の過去であれ
都合良くオブラートに包まれた過去であれ
生きている今はまだ
過去に真実は求めないでおきましょうか

だって過去の自分を否定したくはないものね






(注)本文は以前書いた文章を
   今般改めて加筆修正したものです



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